愛知県津島市を歩けば、至る所で寺に出会う。そう言っても過言ではないかもしれない。面積に対する寺の数を示す「寺密度」を調べると、1キロ四方に約3.3の寺があり、東海3県で圧倒的に多いことが分かった。市もこの「寺密度東海ナンバーワン」を売りにしたイベントを開催し、観光客の誘致を図っている。歴史ある町として知られるが、なぜこれほど多くの寺が集まっているのだろうか。
津島市内に広がる寺の密集エリア
名鉄津島駅の西側を散策すると、すぐに寺が次々と見えてくる。コンビニを見つけるよりはるかに簡単だ。スマートフォンの地図アプリで確認すると、徒歩10分の範囲に約35もの寺院が点在している。
4月28日には、市内の宝寿院で近隣の寺が一斉に御朱印を授ける「出開帳」という催しが行われた。この日の参拝者15人に対し、住職はそれを上回る17人。主催した津島霊場会の長谷川快真会長(70)=観音寺住職=は、「寺が密集しているからこそ集まりやすい。宗派を超えてお参りしてもらいやすい」と話す。
調査で明らかになった寺密度の実態
記者は各県の寺院数が記載された「市町村別宗教法人数」と「宗教法人名簿」をもとに、東海3県の全市町村の寺密度を独自に調査した。その結果、83の寺がある津島市は1平方キロメートルあたりの寺院数が3.308で1位。2位の岩倉市(3.056)、3位の大治町(3.034)を引き離していた。特に昭和の合併以前の旧津島市内には44もの寺が密集している。
歴史的背景が生んだ寺院の集積
なぜ津島はこれほど寺が多いのか。市図書館長を務め、現在は京都産業大教授の園田俊介氏(図書館情報学)は、「津島湊」として大きく発展したことに理由があると指摘する。室町時代、尾張と伊勢を結ぶ交通の要衝となり、人口増加に伴って寺院が増加。また町の発展とともに有力な士族も増え、「信心の証しとして寺院を建てたり、寄進したりした」という。
多様な宗派の寺院が存在することも特徴だ。統計では浄土真宗系と浄土宗系が6割以上を占めるが、真言宗系や曹洞宗系も多い。津島神社の石田泰弘学芸員は「推論」と前置きした上で、「農村は一族の氏寺で祈るが、商業の街だった津島はさまざまな人が集まったため、多様な宗派の寺院が生まれたのではないか」と分析する。
学生の調査から始まった地域活性化
実はこの「寺密度東海ナンバーワン」を明らかにしたのは、名古屋外国語大(日進市)の学生だった。市内の寺で座禅や写経を体験するイベントに参加した際、寺の多さに興味を持ち、2018年に東海3県の寺密度を調査。津島市が最も高いことを突き止めた。記者の4月時点の調査でも順位は変わっていない。
この学生の報告を受け、市は2018年から寺を巡りながら名所を訪れるイベント「津島てら・まち御縁結び」を開始。これまでに21回開催されている。担当職員は「レトロな町並みと町の人との交流も楽しめる」と、寺の多さを生かしたイベントに自信を見せる。
なお、文化庁の調査によると愛知県自体の寺院数は4480で全国1位。津島市の寺密度は全国でもトップクラスかもしれない。御利益を求めて、ぜひ津島を訪れてみてはいかがだろうか。



