大阪大名誉教授の仲野徹さん(69)が、定年退職後に大阪市内で家庭菜園を始めた。病気の発生メカニズムを解明する病理学の専門家で、野菜作りは全くの素人だったが、その魅力にはまり、エッセーを出版するまでになった。
生命科学者が定年後に畑にハマる
この春に出版したのは「生命科学者、定年後に畑にハマる 実践・知的菜産の技術」(幻冬舎、税込み1980円)。野菜作りは知的な驚きと学びに満ちていることや、収穫したての野菜のおいしさなどについて、つづっている。
生命科学者の仲野さんは2022年に阪大を退職した。商店街に近い大阪市内の自宅の裏には、かつて母親がほそぼそと野菜を作っていた畑があった。長らく放置され、雑草が茂っていた。義太夫語りや辺境旅行など多趣味で、「新しいことを始めるのが趣味」という仲野さん。
晴耕雨読のあこがれ
「定年後は晴耕雨読ですわ」と、ちょっとかっこよく言ってみたいというあこがれもあり、栽培を始めた。ミニジャングルと化した雑草を刈り、クワなどの道具をそろえ、土に堆肥を入れた。知らないことばかりで、新鮮だった。どこに何の野菜を植えるか、次にどんな作業が必要か。水はどれだけやればいいのか、肥料はどうする――。
本で調べ、あれこれ考えながら試行錯誤する体験が、研究者になりたての20代の頃と同じようで、心が躍ったという。
育てた野菜は数十種類に
トマト、ナスやキュウリ、トウモロコシ、枝豆、オクラ、サツマイモなど、育てた野菜は数十種類にのぼる。収穫したての野菜は味が濃く、「スーパーで買うものとは全然違う。自分で作ったという喜びも加わって、幸せ感がある」と話す。
また、野菜作りを通じて、土壌の微生物や肥料の成分、植物の生長メカニズムなど、生命科学の知識が生きる場面も多く、研究者としての好奇心を刺激されたという。
仲野さんは「野菜作りは、計画性と観察力が試される。うまくいかないことも多いが、それがまた面白い。定年後の新しい趣味としておすすめです」と語っている。



