イッセー尾形の自伝的エッセー『イッセーエッセー』が刊行
一人芝居を突き詰めてきた役者、イッセー尾形による自伝的エッセー『イッセーエッセー』(青土社)が2026年2月に発売されました。本書は、著者が自らの芸術的歩みを振り返り、未来への不安を抱えた十代の日々から、一人芝居と出会い、世界各地を巡業する現在までの軌跡を、愛嬌のある語り口で真摯に綴っています。
著者自身のイラストと舞台前の暗闇への恐怖
同時に、著者自身が手掛けたかわいらしいイラストがカラーで収録されています。しかし、その最後の一枚は真っ黒なページです。これは、舞台が始まる前、劇場の照明がすべて落とされ、客席が暗闇に沈む瞬間の景色を象徴していると推測されます。著者は何度も、この暗闇に向かうことへの怖さを語っており、「この芝居のどこが面白いんだろう」と底なしの不安に襲われると告白しています。
客席からの視点と緊張と期待の交差
一方、評者である浅古泰史(経済学者・早稲田大学准教授)は、客席からの視点を共有します。暗闇の中で、ただただ舞台を楽しみにしていたというのです。どこにでもいそうな人間の悲哀をコミカルに演じる一人芝居は、辛いことや悲しいことがあっても、それすらも面白おかしい人生の一部として感じさせる瞬間をもたらしました。本書を通じて、暗闇の向こう側(舞台)とこちら側(客席)で、緊張と期待がヒリヒリと交差していたことが伝わってきます。
浅古氏は、「あぁ、またあの舞台へ足を運びたくなってきたなあ」と結び、読者にイッセー尾形の世界への誘いを感じさせます。本書は、芸術家の内面の葛藤と、観客との深い共鳴を描き出した一冊です。価格は2860円です。



