半世紀ぶりの再会、古本探しの旅が結実
半世紀ぶりの再会、古本探しの旅が結実

古本業を始めたとき、私は労せずして見つかるものと高をくくっていた。しかし、現実はそう甘くはなかった。特に、ずっと探し続けている一冊の本のことである。

探し求めた一冊

その本の初版は昭和42年。10代の終わりに読んだ小説で、仕入れも兼ねて各地の古書市に出かけるたびに、私はその本を気にかけていた。半ば諦めつつも、見つけることがささやかな楽しみでもあった。

運命の出会い

ところが、である。ついに見つけてしまったのだ! 先日、いつものように古本の海原を回遊しているとき、百円均一棚の隅で、ほんのわずかに背表紙がのぞいているのを発見した。手に取り、なめるように懐かしい表紙に見入る。実に半世紀ぶりの対面だった。

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それは珍しいペーパーバック版で、第6刷。元の定価は290円。今では文庫本さえ買えない廉価である。

青春の憧れ

当時、私は外国への強い憧れを抱いていた。この小説に心を寄せ、主人公のように横浜から船でナホトカに渡り、できれば広大なシベリアの地を鉄道で横断しようと決めていた。数年後、航路で行くことはかなわなかったが、それでもヨーロッパからインドへと2年にも及ぶ長い旅をした。

本の表題は「青年は荒野をめざす」。一冊の本との出会いから始まり、巡り巡って旅雑誌の仕事から今の古本業にまでたどり着いた。思うに、わが子に著者の五木寛之氏の名前をつけたのも、必然だったのかもしれない。

(松本豊、70歳、埼玉県三芳町)

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