伊野部哲也さん句集「永永無窮」が第4回稲畑汀子賞を受賞
伊野部哲也さん句集「永永無窮」が稲畑汀子賞受賞

高知市在住の俳人、伊野部哲也さん(72)の初めての句集「永永無窮」が、日本伝統俳句協会が主催する「第4回稲畑汀子賞」に輝きました。伊野部さんは俳句結社「勾玉」の主宰であり、読売新聞の「四国文芸」選者としても活躍しています。

句集の内容と受賞の意義

句集には、2011年から2024年にかけて俳誌などに発表された350句が収められています。子や孫に向けた温かい視線、日常の一瞬を切り取る鋭い感性が光る作品群が、多くの読者の共感を呼んでいます。稲畑汀子賞は、高浜虚子の孫で俳誌「ホトトギス」を継承した故・稲畑汀子氏を顕彰して創設されました。第3回受賞者は、奇しくも伊野部さんの師である橋田憲明さんと三村純也さんでした。橋田さんが帯文、三村さんが序文を寄せており、その縁もあって喜びはひとしおです。

俳句との出会いと歩み

伊野部さんが俳句を始めたのは、2000年に日高村で銀行員として働いていた時のことです。知人に誘われて参加した句会で自作の句が思いのほか褒められ、フレンドリーな雰囲気に惹かれて句会に通い始めました。50歳を前に、生涯の趣味を持ちたいという思いも後押ししました。5年ほど通う中で、「勾玉」の主宰だった橋田憲明さんと出会い、県立文学館の初代館長でもある橋田さんから俳句の基礎を学びました。その後、中央の結社でも学びたいと、三村純也さん主宰の「山茶花」に入会しました。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

三村さんの指導は厳しく、俳誌の句評がすべて自分に向けられているように感じました。関西までの吟行会に参加しても、自分の作品が一つも選ばれず手ぶらで帰ることもありました。「同じ景色を見ていても、自分の句は先生の心を打たなかった。言葉の引き出しが足りないと痛感した」と振り返ります。それからはとにかく多くの句を詠むことを心がけ、少しずつ認められるようになりました。入会から6年以上が過ぎた頃、その号で最も優れた作品として巻頭に掲載され、さらに俳句に没頭しました。

句集タイトル「永永無窮」に込めた思い

句集のタイトル「永永無窮」は、果てしなく続くという意味で、俳句に向き合う自身の姿勢を表現しています。作品の中でも特に目を引くのは、子や孫を詠んだものです。例えば「まだ遊び足らぬ子の手を蚊帳に引く」や「花の子に花の母ゐる七五三」、「嫁ぐ子と一つ屋根下明易し」といった句からは、子どもを庇護したい親の深い愛情が伝わります。

また、身近な暮らしを題材にした作品も多く、「夜桜に中りたるごと寝つかれず」は銀行員時代の花見体験から生まれました。帰宅後も興奮して眠れないほど見事な桜だったことがうかがえます。「美しい花が咲いていましたというだけでは俳句にならない。自分の中で湧き出る気持ち、例えば親子の情やものへの哀れみが入らないといけない。そうした句こそ共感を得られる」と語ります。

今後の目標

2023年から「勾玉」の主宰を務める伊野部さんは、今の目標を「名刺代わりの句」を作ることと語ります。「橋田先生の句は、一つ一つの言葉に重みと格調がある。100句の中に1句混じっていても、それとわかる。そんな作品を作りたい。周りに理解されなくてもいい……いや、こんなことを言うと後で恥をかくな」と照れ笑いを浮かべました。

句集「永永無窮」は現在書店では販売されておらず、公立図書館などで読むことができます。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ