惣十郎浮世始末第293回:五年前の疑念とお粂の真実
惣十郎浮世始末第293回:五年前の疑念とお粂の真実

惣十郎は、源次郎が製作した部品とお粂の図面とが完全に一致している事実を踏まえ、五年前に起きた一件はそもそも捕り物の誤りだったのではないか、という考えを志村に対して率直に打ち明けた。

鍛冶の証言と疑念の深まり

惣十郎はさらに、鍛冶の元には多くの図面が提出されていたが、それらはいずれも形状が多少異なるだけで、仕組み自体には何ら違いがなかったと述べた。志村は渋い表情で、お粂が他に使っていた鍛冶はいないのかと問い質した。すると崎岡がすぐに、鉄砲は別の鍛冶に依頼していた可能性もあると、志村に追従する形で口を挟んだ。惣十郎は一度呼吸を整えてから、言葉を続けた。

お粂の無実と証拠の不在

惣十郎は、お粂は武器など一切作っていないと見当をつけているが、実際にやっていないと証明することはできない、というのが正直なところだと認めた。他の鍛冶を使って鉄砲を製造していた可能性や、リュクトポムプの仕組みを応用して気砲を作ろうと目論んでいた疑いも、完全に払拭できたわけではない。しかし、今回自分が調査した限りでは、鉄砲を製造していたという証拠はどこからも出てこなかった。欠片一つとして見当たらなかったのだ。

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鍛冶町で番太郎をしていた和平が、源次郎に「鉄砲でも造らされてたら事だ」と忠告したのが、唯一お粂と武器とを結びつけるやり取りだった。しかし、それは単なる和平の妄想に過ぎず、何の根拠もないお粗末な因果関係だったのである。

河本の思い込みと吟味方の過失

惣十郎は、河本様がお粂を捕縛するに至った経緯は、ただの思い込みに他ならないだろうと指摘した。しかし、当時どのような吟味の結果、お粂が永牢となったのか、その点については不可解でならないと述べた。崎岡が小声で「おい」と言い、惣十郎の袖を引いた。

志村は、その点については自分も調べたと言い、しばし逡巡してから、当時は武器を製造していた十分な証拠があったということで片付けられたようだと説明した。擬律においても永牢が妥当とされ、例繰方も丹念に御仕置裁許帳を調べたと言う。そのため、吟味方には何の過失もなかったと、当時を知る者たちは口を揃えて言っているという。

惣十郎は、それは当時吟味方にいらした駒井様に、先にお話を伺ったということでしょうかと問い返した。

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