秀島由己男回顧展、熊本市現代美術館で開催中
熊本県水俣市出身の版画家・画家、秀島由己男(1934~2018年)の回顧展が、熊本市現代美術館で開かれている。代表作「霊歌」をはじめとする画業を通覧するとともに、近年明らかになった創作の舞台裏にも迫っている。
秀島は中学卒業後、働きながら地元の画塾で水彩画を学び、23歳で版画家の浜田知明と出会ったことで木版画、やがて銅版画を制作するようになった。
「霊歌」シリーズとその背景
「霊歌」は、口を大きく開けた人物が登場する作品で、20代から晩年まで版画や油彩で繰り返し発表された。ラジオで聴いた「黒人霊歌」から本作の着想を得たという。生前、秀島は「戦後、ご飯も満足に食べられない子どもたちがたくさんいました。人間の持っている悲しみは黒人だけではない。我々にもあるんじゃないか」と語っている。
キャリアと石牟礼道子との共作
31歳のとき熊日総合美術展で最高賞を受賞し、40代以降は国際展でも入賞するなどキャリアを重ねた。同郷の作家石牟礼道子とは10代の頃から「姉さん」と慕う仲で、共作した石牟礼の詩画集「彼岸花」、小説「春の城」(旧題「アニマの鳥」)の挿絵の原画も展示されている。
作品の特徴と学芸員の解説
画題は静物や人物、風景など多彩だが、人間の足をしたチョウなどシュールレアリスム的なものが多く、妖しさのなかに、孤独や死の影が感じられる。展覧会を担当する冨澤治子学芸員は、「秀島は10代後半で両親を相次いで失うなど、生きる苦しみというものと向き合い続けた人だった」と解説する。
創作の舞台裏:自らモデルに
同県和水町の自宅には作品や原版、写真など2200点が未整理のまま残され町に寄贈された。町と同美術館による調査で、版画の中の人物と同じポーズをとる秀島自身の写真が多数確認され、作品と並べて展示されている。冨澤学芸員は「自らポーズを取っていたとは、生前一言も口にされていなかった。晩年になって写真に絵を描いた作品が登場し、とっぴに感じていたが、実は自然な流れだったことがわかった」と話す。
関連資料も含めて計264点を展示。「秀島由己男展 ダークファンタジー/ミステリアス 水俣が生んだ異才」は21日まで。



