会田誠・岡田裕子夫妻の初2人展、カスヤの森現代美術館で開催中
会田誠・岡田裕子夫妻の初2人展、カスヤの森現代美術館で

神奈川県横須賀市のカスヤの森現代美術館で、現代美術家の会田誠と岡田裕子(ひろこ)夫妻による初めての2人展が開催されている。会期は8月16日までで、月・火・水曜日は休館となる。

会田誠の新作《混浴図》公開制作

会田は新作《混浴図》の公開制作に取り組んでいる。高さ2メートル、幅3メートルを超える絵画が3枚連なる大作で、広大な露天浴場を舞台に、歴史的人物や政治家、人ならざる者たちが一堂に会し、湯浴みを楽しむ風刺的な内容となっている。会田の筆は部分的に進むため、ぽつりぽつりと入浴者が画面に登場していく。会期中に完成しないこともあり、来場者は入浴者たちが出現し続ける過程を見守ることになる。

岡田裕子のインスタレーション《井戸端で、その女たちは》

岡田は、2025年に神戸で発表したインスタレーション《井戸端で、その女たちは》を再編した作品を、館内の2カ所で展示している。本作では、物故者である女性アーティストたちが岡田の声を介してよみがえり、おしゃべりを繰り広げる。

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展示室の井戸端会議

美術館内の展示室では、井戸が再現されるとともに、具体美術協会の結成メンバーであった山崎つる子(1925~2019年)、ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズに参加した岸本清子(さやこ)(1939~88年)、備前アートイヴェントの立役者・林三從(みより)(1933~2000年)がテーブルを囲み、自分たちの来歴や作品を語りながら、男性中心の美術業界を笑い飛ばす会話が流れる。

庭園の古井戸での対話

美術館の庭園にある古井戸の近くでは、画家・大橋了介(りょうかい)の妻で自身も画家やドレスデザイナーとして活動した大橋エレナ(1895~1966年)、具体美術協会の初期メンバーでアクション・ペインター白髪(しらが)一雄の妻でもあった白髪富士子(1928~2015年)が円卓に着き、それぞれの歩みや夫との関係を振り返る。

ふたつのテーブルで繰り広げられる時空を超えたおしゃべりは、ときに交差する。岡田はひとり5役をこなし、精緻な声色で全員を演じ分けた。ここでの会話劇はとてもコミカルな創作でありながら、研究者やアーキビストの研究成果をふまえている。自分が死んだことを知りながら、その死すらも一蹴する彼女たちのおしゃべりは、じつに痛快で、だからこそ、少し切ない。女性アーティストが構造的に不可視化され、注目されたとしても「紅一点」としてジェンダー化された歴史は、けっして過ぎ去った過去ではないからだ。

カスヤの森現代美術館の意義

私設美術館として、ヨーゼフ・ボイス、ナム・ジュン・パイク、李禹煥(リウファン)、若江漢字、宮脇愛子の常設展示を行うカスヤの森現代美術館は、日本の現代美術シーンを牽引する最たる現場のひとつだ。同館が体現する現代美術の歴史性ともあいまって、会田と岡田の2人展からは、歴史の検証と創造的介入という手つきの共通性を見て取ることができた。(小田原のどか=彫刻家、評論家)

2人展 会田誠・岡田裕子は、神奈川県横須賀市平作7の12の13、カスヤの森現代美術館(電046・852・3030)で8月16日まで開催。月・火・水曜休館。

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