スケートボード「天才」松本雪聖、世界大会連勝から五輪へ「本気で目指す」
スケートボード松本雪聖、世界大会連勝から五輪へ

日本のスケートボード界で、世界から注目を集める「天才」がいる。熊本県の中学3年生、松本雪聖(いぶき、14歳)だ。2025年から世界大会を2戦連続で制し、大ブレイクを果たした。彼女は「次の五輪は本気で目指す」と語り、その先にある目標を明確にしている。

日本代表に名を連ねて

5月中旬、国内統括団体「ワールドスケートジャパン」は、6月14~21日にイタリア・ローマで開催されるワールドツアーのストリートに出場する日本代表選手を発表した。この大会は2028年ロサンゼルス五輪の予選を兼ねており、リストには東京五輪金メダルの西矢椛(サンリオ)、パリ五輪金メダルの吉沢恋(ACT SB STORE)、銀メダルの赤間凛音らが名を連ねる。そして、松本雪聖の名前もそこにある。

「ちょっと緊張してるかなって感じです」と、彼女はオンライン取材で飾り気なく答えた。母の沙織さんとともに応じた取材では、中学3年生らしい日常ものぞかせる。直前に三者面談があり、先生とは「オリンピックに向けて頑張る」と話したが、高校受験も目前。進路希望は「全日制の普通科高校」だが、成績以外にも心配事がある。「オリンピックの選考レースもあるし、Xゲームズは夏だけで3か所回らないといけない」。世界ランキング1位の彼女は今、忙しく世界を転戦し、出席日数が気がかりだ。

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世界で勝つことが「分かった」

「どういうことをすれば勝てるのかっていうのが分かった」と松本は語る。スケートボード女子ストリートは日本勢が圧倒的に強く、東京、パリと五輪は2大会連続で日本が優勝。世界大会でも上位を日本勢が占めることが多い。そんな中、松本は2025年に大ブレイクを果たした。同年11月、福岡県北九州市で行われたワールドカップで優勝。ハイライトは、2位で迎えた決勝のベストトリック3本目。「キックフリップ・フロントサイドノーズグラインド」(板を裏表に回しながらジャンプし、前輪の金具を当てて滑る技)を見事に成功させた。「未完成で、どこで打ってもメイクできるとは限らない」というこの技を、優勝がかかる場面で「他に勝てる技がなくて」選択し、きっちり決めた。

約3か月後の今年3月、ブラジル・サンパウロで行われた世界選手権では、「誰もしない技だからこそ自分にできる」と、決勝のベストトリックで「キックフリップ・フロントサイド50-50」(板を裏表に回しながらジャンプし、前後輪の金具を当てて滑る技)という大技を決めて優勝。この大会には、東京、パリ五輪で2大会連続表彰台のライッサ・レアウ(ブラジル)が出場していた。インスタグラムで800万人以上のフォロワーを持つレアウはブラジルのスーパースター。その地元で主役の座をさらった。

松本の何がすごいのか

スケートボードの種目「ストリート」は、45秒間自由に滑る「ラン」と一つの技で競う「ベストトリック」の総合得点で順位が決まる。松本は多い時には「1日7時間以上滑る」という膨大な練習量で培った体力とスピードで「ラン」で得点を重ねる。一方、技術は粗削りな部分があり、一発の完成度を競う「ベストトリック」で勝ちきれないことが多かった。しかし、「大会ごとの感覚をつかめるようになったし、技のバリエーションが増えた」ことで、独創性のあるトリックで高得点をマークするようになり、飛躍につながった。

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大けがにも「次頑張ればいいか」

今年3月末、日本オープン直前の練習中に着地を失敗。左ひざのじん帯を部分断裂する大けがを負った。それでも「無理せず、次頑張ればいいかなと思った」とマイペースを崩さない。堀米雄斗(三井住友DSアセットマネジメント)や吉沢らトップ選手が出場したこの大会を見て、「みんなレベルが上がっているから自分も頑張らないと。先輩たちにも食らいついていきたい」と悲壮感は皆無だ。

けが明けのトレーニングでは、「じん帯は元に戻らないから筋肉を強化する。瞬発系の筋力を鍛えられるようにしている」という。さらに、ボードに乗ったままジャンプする超基本技「オーリー」を2時間続けて練習するなど、「スポ根」トレーニングで地力を底上げする。嫌にならないのかと聞くと、「めちゃくちゃ飽きるけれど、そういう時はサッカーボールを持ってきて壁打ちしています」と屈託ない。

全ては五輪のために

それもこれも、全て五輪のためだ。「本気で狙いに行く」というロス五輪。彼女が金メダルを取れば、女子ストリートは日本勢3連覇になる。ちなみに、東京を制した西矢は13歳、パリ「金」の吉沢は14歳だった。16歳で迎える松本が栄冠を手にしても、早すぎることは全くない。

まずは、28年ロス五輪予選の初戦となる6月のワールドツアー・ローマ大会。「調整が間に合うかはぎりぎり」で「ちょっと緊張している」という。でも、きっぱりと言った。「ここで勝って、3回連続で世界大会を優勝したい。ローマで試合するのは3回目。苦手なコースだけれど、そこを克服して勝ちたい」。一つずつハードルを乗り越えて、天才は夢の舞台へと進む。