サッカーワールドカップ(W杯)北中米3か国大会が12日(日本時間)に開幕する。開幕戦は開催国の一つ、メキシコ対南アフリカ。4年に一度のサッカーの祭典というだけでなく、サッカー界の「玄人」である関係者はこぞってこの試合に注目する。関係者が熱い視線を送るのは「楽しみだから」とは別の理由がある。
新ルール「審判」の判断に注目
なぜ開幕戦が注目されるのか。「開幕戦の判定は、その後の試合の基準になるんです」と解説するのは、W杯男女計7大会を現地取材し、自らもサッカーを楽しむ読売新聞のベテラン記者・川島健司編集委員だ。
サッカーの競技規則の変更は、国際サッカー評議会(IFAB)が毎年2月頃に開く総会で決め、通常なら欧州で言えば夏以降の新シーズン開幕から適用になる。ただし、W杯の年は前倒しでW杯から新ルールが適用され、どの代表も慣れていない。新ルールをどう運用して裁くのか、開幕戦が一つの「指標」になるという。
「5秒」「10秒」が命取りに
今大会では、試合の流れに影響しかねない新ルールの適用に注目が集まっている。例えば、スローインとゴールキックに時間制限が設けられる「5秒ルール」だ。プレーが意図的に遅らされている場合、主審は笛を吹いて腕を上げ5秒を数え始める。5秒を過ぎると、スローインは相手チームに移り、ゴールキックの場合は相手チームのコーナーキックとなる。接戦であればあるほど、その5秒は命取りになりかねない。
「急いでボールを離さなくてはならず、選手にはかなりのストレスになるはず」と川島編集委員。ロングスローを入れるためタオルで念入りにボールを拭く光景は見られなくなるかもしれない。
交代する選手が10秒以内にピッチから出なければならない「10秒ルール」も始まる。これを破ると、1分間交代選手が入場できなくなるペナルティーが科される。「1分間といっても、1分が過ぎた後、プレーが途切れた時にしか入れない。プレーが途切れなければ、かなり長い間、数の上で劣勢を迫られるわけです」と川島編集委員。観客の拍手を受けながら悠々とピッチを横切る交代シーンもなくなりそうだ。
ちなみに、5月31日に行われた日本代表とアイスランドとの壮行試合では、前倒しでこの新ルールが適用された。アイスランドの選手1人が「10秒ルール」を破り、ピッチ上の選手が一時10人となり、数的優位の日本がこの間にゴールして勝利をつかんだ。
「時間制限は、試合のテンポをよくして、実際のプレー時間を増やす狙いがある。ただ、大きな変更なので、最初は混乱するかもしれません」と川島編集委員。その上でも開幕戦でどう審判がさばくかに注目だ。
飲水タイム、どこで設ける?
今大会で設けられる「ハイドレーション・ブレイク(飲水タイム)」も試合の流れに影響を与えそうだ。脱水症予防のために、どの試合でも前後半に1回ずつ3分の時間を設けて、水分補給をすることになった。
だいたい試合の半ばに設けられるが、どのタイミングでブレイクを入れるかは主審の判断だ。川島編集委員は、「3分あれば、ベンチに戻って、監督・コーチの指示を聞くことができる。押しているチームは試合を止められたくないし、攻め込まれている側は『助かった』と思うかもしれない」と述べる。
ファウルの基準についても、「開幕戦を見て、選手や関係者は『この接触では笛が鳴った』『このプレーは笛が鳴らなかった』と参考にする」と川島編集委員は語る。
審判はどんな人?
注目の開幕戦は、ウィルトン・サンパイオ主審以下、ブラジル人のトリオと、南米の審判員がVARなども担当することが発表になった。「開幕戦の注目度が高いことは運営側も分かっているから、各国から集められた審判たちの中から優秀な人が選抜される」と川島編集委員。
W杯の審判は、国際サッカー連盟(FIFA)が国際大会や国内試合でのパフォーマンスなどを考慮して各国から選ぶ。選出された審判員は、開幕前にセミナーを受けるなどし、担当試合が割り当てられるのを待つ。公平を期すため、対戦する2チームとは違う国籍で、所属する大陸連盟も違う人が選ばれることが基本だ。
今大会で日本から参加する、荒木友輔審判員と三原純審判員は、4試合目の開催国アメリカとパラグアイ戦で第4審判と第5審判を務めることが発表された。
過去のW杯では、日本人が主審を務めたこともある。1986年メキシコ大会と90年イタリア大会のほか、98年フランス大会からは5大会連続で日本人審判が主審として試合をさばいた。2014年ブラジル大会では、開幕戦のブラジル対クロアチア戦で、西村雄一さんが主審を務めた。川島編集委員は「開幕戦に選ばれた主審が、どういうジャッジをするか注目したい」と話す。
新ルールもファウルも、審判の笛は試合の流れに大きく影響する。開幕戦で吹かれる笛はその後の試合にも影響することもあり、まさに大会を占う一戦となる。
今大会は48チーム出場
今大会のサッカーW杯は、6月12日~7月20日(日本時間)にかけて、アメリカ、カナダ、メキシコの3か国にまたがって開催される。出場チーム数は48で、前回から16増えた。48チームはまず12組のグループリーグに分かれ、決勝トーナメント進出をかけて戦う。F組の日本は、6月15日午前5時(同)に、オランダとの初戦を迎える。



