ウクライナ選手のヘルメット訴えが棄却 CASがIOCの表現制限を支持
スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのスケルトン男子ウクライナ代表選手、ウラジスラフ・ヘラスケビッチ(27)による失格取り消しを求めた訴えを正式に棄却しました。この決定は、戦争で亡くなったアスリートが描かれたヘルメットの着用を巡る国際的な論争に一石を投じるものとなりました。
表現ガイドラインの「合理性」を強調
CASは、国際オリンピック委員会(IOC)が定める表現に関するガイドラインが、競技の場で選手が意見表明する権利を制限している点について、「合理的かつ相応な措置である」と明確に指摘しました。裁判所は、選手が意見を表明する機会は記者会見や交流サイト(SNS)など他にも多数存在し、ヘラスケビッチ選手の場合は、4回にわたる練習の際に既にヘルメットを着用していた事実も考慮したと説明しています。
一方で、CASはヘラスケビッチ選手の追悼行為や、ウクライナ人および同国アスリートが戦争によって経験している深い悲しみに対して「全面的に共感する」との見解も併せて示しました。この表明は、法的判断と人道的配慮のバランスを取る姿勢を浮き彫りにしています。
選手と大統領の面会で団結のメッセージ
ウクライナメディアの報道によれば、ヘラスケビッチ選手は13日、ドイツのミュンヘンを訪問し、ミュンヘン安全保障会議に合わせて同地を訪れていたウクライナのゼレンスキー大統領と直接面会しました。面会の中で、ヘラスケビッチ選手は「ヘルメットに描かれている選手たちが、ウクライナへの国際的な注目を集め、国民の団結を強めている」と力強く述べ、ゼレンスキー大統領はこれに対して謝意を示しました。
ヘラスケビッチ選手は以前から、IOCによる失格判断を「過剰な反応」と批判し、「取り返しのつかない損害を生む大きな過ちだ」と主張してきました。今回のCASの裁定は、こうした選手側の訴えを退ける形となりました。
五輪期間中の迅速な仲裁体制
CASは、オリンピック期間中に発生する係争を迅速に処理するため、ミラノに臨時事務所を設置しています。この体制により、訴えが提起されてから24時間以内に裁定を下すことが可能となっており、今回のケースでも、12日午後に提訴が受理された後、速やかな審理が行われました。共同通信の報道によれば、この効率的な仲裁プロセスが、五輪の円滑な運営に貢献していると評価されています。
今回の決定は、スポーツの場における政治的・社会的メッセージの表現と、競技の公平性や中立性を維持するための規制の間で、今後も続くであろう議論に新たな焦点を当てることになりそうです。ウクライナ選手の訴え棄却は、国際スポーツ界が複雑な情勢の中でどのようにバランスを取っていくのか、その難しさを象徴する事例として注目を集めています。