認知症高齢者の資産搾取、金融機関の気付きが被害発覚の端緒に
認知症及び軽度認知障害の人は高齢者の約3割を占め、その保有する家計資産は総額で約260兆円に達すると推計されています。詐欺や消費者トラブルが多発する中で、過度な保護は本人の資産利用を制限することにもなりかねません。保護と利用の両立を図る道筋が模索されています。
金融機関での異変がきっかけ
その「金銭搾取」が明らかになった発端は、金融機関における些細な変化でした。高齢の顧客の様子が、最近どうもおかしい。通帳の再発行と届け出印の再登録申請が相次いで行われ、来店時には「近所の人」が常に同伴するようになったのです。
2024年、静岡県焼津市。ある金融機関の職員が、一人の女性顧客の異変に鋭く気付きました。金融機関からは、市が設置する「困りごとマルっとサポートセンター」に相談が寄せられることになります。
縦割りを超えた支援体制
同センターは、高齢者介護や障害者支援など従来の「縦割り」施策だけでは解決が困難な複合的な課題を抱える市民をサポートするため、部局横断で設置された機関です。直ちに、様々な担当課や他の公的機関を含む支援会議が開催され、具体的な対応策が話し合われました。
まず、高齢者の介護や生活相談の窓口となる地域包括支援センターから、社会福祉士が自宅訪問を実施することに決定。女性は当時81歳で、90代の夫と一軒家で暮らしていました。数年前にも地域包括からの訪問歴がありましたが、その際は支援や関わりを拒否されていた経緯がありました。
伏せられた情報と浮かび上がる実態
今回の訪問では、金融機関から情報が寄せられたことは伏せた上で、近況が丁寧に尋ねられました。「何かお困りのことはありませんか」という問いかけに対し、今回は詳細な暮らしぶりを聞き取ることができました。
貯金は夫とは別に1千万円以上あり、当面の生活に困る様子は見られませんでした。しかし、子ども2人は他県に居住しており、関わる機会は著しく減少。数年前から外出も減り、最近は食品購入程度しか出かけていないとのことでした。
不可解な自宅改修の痕跡
自宅の状況を確認すると、屋根など数カ所に改修の跡が認められました。ただし、改修が必要なほど老朽化しているようには見えません。「なぜ改修をされたのですか」と尋ねても、女性の説明は曖昧で明確ではありませんでした。
月に一度、女性は金融機関を訪れていたものの、その行動パターンにも不自然な点が散見されました。これらの情報を総合的に判断し、関係機関は本格的な支援体制の構築に乗り出したのです。
認知症高齢者の資産管理は、単なる保護だけでなく、本人の意思尊重と社会参加のバランスが求められる複雑な課題です。金融機関の初期対応が早期発見につながったこの事例は、地域全体で高齢者を見守るシステムの重要性を浮き彫りにしています。



