賃上げの恩恵から取り残される就職氷河期世代、熊野エコノミストが「制度の谷間」を指摘
就職氷河期世代、賃上げの恩恵から取り残される実態

賃上げの恩恵から取り残される就職氷河期世代、熊野エコノミストが「制度の谷間」を指摘

人手不足を背景にした記録的な賃上げが進む中、その恩恵から取り残されている世代が存在する。日本の労働市場が抱える構造的な歪みについて、第一ライフ資産運用経済研究所の熊野英生首席エコノミストに詳しく聞いた。

若年層と高齢者は賃金上昇、50代前半はマイナス

熊野エコノミストは、現在の労働市場を次のように分析する。「若年層は深刻な人手不足による『初任給の引き上げ』、60歳以上は高年齢者雇用安定法や定年延長といった『制度的な底上げ』の恩恵を受けています。しかし、その中間に位置する50代前半の就職氷河期世代には、需給の逼迫も制度の後押しも及んでいません。まさに制度の谷間に置かれた世代と言えるでしょう」

入社時のタイミングが影を落とす構造的問題

なぜ一部の世代だけが取り残されるのか。熊野氏は、入社時のタイミングが大きな要因だと指摘する。「採用を絞られた時期の入社で、生産性向上の恩恵を受けていないケースが多く、十分な教育機会を得られなかった人も少なくありません。大企業ではポストが埋まり、キャリアの目詰まりも起きています。業績悪化時には、最も高コストなこの世代の昇給停止やリストラがコスト削減手段になりやすい構造的な問題が大きいのです」

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「在籍型出向」の積極活用を提唱

この問題を打破する処方箋として、熊野エコノミストは「在籍型出向」の積極活用を提唱する。「日本の労働市場の流動性の低さが根本にあります。籍を元の会社に残したまま、人手不足に悩む他社や中小企業に数年出向し、その後転籍する仕組みで、コロナ禍では雇用調整助成金によって活用が進みました。これをシニア層のキャリア形成として恒常化させるべきです」

企業と労働者、双方にメリット

この仕組みのメリットについて、熊野氏は次のように説明する。

  • 企業にとっては、定年延長に伴うコスト増を抑えつつ、割増退職金を払う一方的なリストラを避けられる。
  • 労働者にとっては、いきなり解雇され見知らぬ地へ転職するよりリスクが低く、外の空気を吸いながらスキルを試す「ソフトランディング」な労働移動になる。
  • 中小企業も大企業の経験豊富な人材を確保でき、三方よしとなる。

民間主導での意識改革が急務

熊野エコノミストは、民間が動く必要性を強調する。「一つの会社にいれば安泰というマインドセットを改める時期に来ています。制度の改革はかつて大企業では消極的な空気もありましたが、今や70歳定年の時代です。50代のうちに外部の市場に触れ、自分の価値を再確認する機会を民間主導で作らなければ、この世代の沈没は止まらないでしょう」

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