「準備不足でした。就活は、早めに始めるに越したことはないのかな……」——5月下旬、東京都内の私立大学4年の男子学生(21)は、まだ内定を得られていない苦しい胸の内を明かした。
就活を始めたのは1年前の夏。志望していた経営コンサルティング企業の説明会に参加しつつも、「売り手市場だし、何とかなる」と思っていた。
代表を務めるスポーツ系サークルの活動に力を入れていたため、本腰を入れたのは冬ごろ。だがその時点で、本選考に直結するインターンシップ(就業体験)を実施する企業が出始めていた。申し込んだが、選考を通過できなかった。
年が明け、春までに約30社の企業にエントリーシートを提出。面接に進めたところもあったが、多くが「不採用」に。いま、選考が残るのは数社だという。「売り手市場が続くなら……」再挑戦もあきらめたわけではない。だが、すでに周囲では内定を得た友人も多く、焦りは募る。
「もしこのまま内定が得られなければ、休学して来年もう一度挑戦することも考えている」と彼は語る。就活に専念するため、学業を一時中断する選択肢も視野に入れているのだ。
就活早期化の実態
近年、大学生の就職活動は急速に早期化が進んでいる。政府が定める「3月広報解禁、6月選考解禁」という日程は変わらないものの、その前段階から始まるインターンシップが実質的な選考の場となっている。企業は優秀な学生を早い段階で確保しようと、インターンシップを選考に直結させるケースが増えている。
立教大学教授の首藤若菜氏(労働経済学)は、「インターンシップが事実上の選考となり、学生は実質的に1年以上前から準備を強いられている。売り手市場とはいえ、準備不足の学生は取り残されやすい」と指摘する。
学生の戸惑い
韓国在住の文化系ライター、成川彩氏は「大学2年生から就活の焦りを感じるというのは、大学生活を謳歌できる期間が短すぎる。日本の就活は売り手市場で余裕があると思っていたが、意外だった」とコメントする。
実際、就活の早期化に伴い、学生の間では「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)のアピールに苦労する声も聞かれる。学業とサークル活動の両立に追われ、就活に十分な時間を割けない学生も少なくない。
一方で、企業側も「準備不足の学生は、インターンシップや面接で見極めやすい」と話す。採用担当者は「学生には早めの対策を求めている」と強調する。
今後の課題
就活の早期化は、学生の負担を増やすだけでなく、学業の質の低下や休学の増加など、さまざまな問題を引き起こしている。政府は2029年春入社から就活日程の見直しを検討しているが、前倒し案も出ており、実効性が問われる。
「売り手市場だからこそ、学生は自分を過信せず、早めの準備が必要」と首藤氏は警鐘を鳴らす。就活に悩む学生たちは、情報収集や自己分析を徹底し、計画的に行動することが求められている。



