豊島区の高校で広がる「ライフデザイン」授業 こどもNISA前に自分らしい生き方を考える
来年には18歳未満でも利用できる「こどもNISA(少額投資非課税制度)」が開始予定となるなど、若い世代への金融経済教育の必要性が一段と高まっている。しかし、単なる資産形成の知識だけでなく、「何のためにお金について学ぶのか」という根本的な問いが重要視されている。学校現場では、自分らしい生き方を思い描く「ライフデザイン」の視点を組み込んだ学びの動きが活発化している。
ゲームで学ぶお金と時間のバランス感覚
東京都豊島区の飛鳥未来高校池袋キャンパスでは、3年生23人が人生体験カードゲーム「ライフプロデュース」を使った特別授業に参加した。この授業は、金融教育を手がける企業「ブロードマインド」(渋谷区)が提供する出前プログラムで、限りあるお金と時間をどう使うかをテーマとしている。
生徒たちはまず、「推し活」「海外旅行」「結婚」「高収入の職業」など計20項目から人生の望みを三つ選択する。その後、就職や結婚などのライフイベントごとにさまざまな選択肢を選びながら、望みの実現を目指していく。各選択肢には必要な「お金」と「時間」が設定されており、手持ちの資源を考慮して決断を下す必要がある。
例えば、高収入でも多忙な職業を選ぶと、望みをかなえる時間が取れなくなる。逆に、自由な時間はあっても収入が低いと、望みを実現するための資金に困るというジレンマが生じる。ゲームは2回行われ、初回の反省を踏まえて人生の「再設計」を経験することで、自分の価値観を明確にしていく仕組みだ。
授業後、生徒からは「お金が多くもらえても時間がなければ意味がない」「お金も時間も計画的に使わないと」といった実感のこもった感想が相次いだ。講師を務めた同社社員は、「人生の出来事にどのぐらいお金と時間がかかり、選択でどう変わるのかを知ることが大切」と強調する。
ライフデザインが金融リテラシーの土台に
学校では学習指導要領に基づき、家計管理から資産形成までお金を巡る知識を教えている。一方、政府は自分らしい将来像を描く「ライフデザイン」の重要性を唱え、こども家庭庁でも有識者検討会を設けて実現の支援策を検討している。
第一ライフ資産運用経済研究所の鄭美沙主任研究員は、「人生の選択肢が多様化し、もうモデルコースはない。個々の価値観に沿って自分の将来像を考える視点が不可欠になった」と指摘する。どう生きたいかを思い描き、進学や仕事、家族について計画を組み立て、必要な手段やお金など生活設計を考えることが重要だという。
鄭氏は、生活設計が金融リテラシーの一つだとし、金融経済教育にライフデザインの視点を取り入れる必要性を強調する。「投資や資産形成に焦点が当てられがちだが、自分らしい人生を選び取る力を育てるのが、本来の金融経済教育。生活設計を基に、家計管理や適切な資産形成を体系的に学ぶことが重要だ」と述べている。
若年層ほどライフデザインへの関心が高い
こども家庭庁が2025年11月に実施した調査(15〜69歳対象)によると、働き方や暮らし方の情報を得てライフデザインを考える機会について、どの年代も4〜5割が「必要」と回答した。実際に「欲しい」という人は、10代が43.7%、20代が39.6%と、若年層ほど多い傾向が見られる。
ライフデザインをした人に計画通りに進んだことを尋ねると、「収入、貯金」(43.8%)が最も多く、次いで「結婚か独身か」(42.9%)、「就職、転職」(39.6%)など家庭や仕事関連が続いた。一方、ライフデザインをしていない人の理由では、「そもそも考えがなかった」「きっかけがなかった」という回答が上位を占め、視点や機会の不足が浮き彫りになった。
また、中高生から社会人10年目まで4つの時期に分け、ライフデザインをする上で必要とされる情報を時期ごとに尋ねると、働き方や結婚、育児関連は時期で差が出る半面、どの時期も約3割に上ったのが「資産形成・運用」だった。お金の情報はどの時期でも一貫して必要とする意識があり、ライフデザインを考える上で金融経済教育は切り離せないことが示されている。
豊島区をはじめとする教育現場では、こうした調査結果を踏まえ、従来の金融教育にライフデザインの要素を組み込む取り組みが加速している。自分らしい生き方を描く力を育むことが、結果的に適切な資産形成や家計管理につながると期待されている。



