音声解析で性暴力やいじめを解明 専門家がICレコーダー活用を呼びかけ
音声解析で性暴力・いじめ解明 ICレコーダー活用呼びかけ

音声解析の力で隠れた真実を暴く 専門家が子供を守る新たな手段を提唱

証拠が残りにくく、加害者の特定が困難ないじめや、表面化しにくい性暴力事件。千葉音声研究所(千葉市中央区)の代表を務める村岡睦稔氏(45)は、録音された音声を詳細に解析することで、こうした深刻な問題の解明に取り組んでいる。昨年4月にはフリースクールを開校し、いじめなどが原因で学校に通えなくなった子供たちの支援にも力を注いでいる。

フリースクールで子供たちの居場所を提供

「その筆箱かわいい!先生も欲しい」「アマゾンで買えるよー」。千葉市中央区にあるフリースクールの教室では、1月下旬、楽しげな声が響き渡っていた。このフリースクールは、村岡氏が昨年4月に設立したもので、現在は小中学生約10人が通い、学校への復学を目指して日々を過ごしている。

昨年9月から通い始めた中学1年生の女子生徒は、SNSで友人から暴言を送られ、学校に通えなくなった経験を持つ。フリースクールに通い始めた当初は、あえて明るく振る舞っていたが、「悩みを聞いてくれる人が増え、自然体で過ごせるようになった」と心境の変化を語る。

村岡氏は「学校は同年代の子供たちと一緒に、質の高い教育を受けられる大切な場所です。『学校に戻らなくていいよ』とは決して言いません。しかし、困っている子供がいたら、遠慮なく頼ってほしい」と温かい笑顔で語りかける。

音声解析の専門家としての活動

村岡氏のもう一つの顔は、ノイズ除去や声紋鑑定を通じて音の正体を特定する「千葉音声研究所」の代表である。前職は大手楽器メーカーの社員で、個人的に作曲も手がけていた経験を活かし、2017年5月に音声研究所を設立。現在は全国の弁護士や警察から、いじめや事件に関わる防犯カメラなどの音声解析の依頼を受けている。

初めて受けた相談は、小学校低学年の女児の母親からのものだった。「娘の様子がおかしい。何か隠し事をしているようだ」という懸念から、母親が自宅の押し入れに仕込んだICレコーダーには音声が録音されていたが、内容までは判別できなかった。

村岡氏が音声を詳細に解析した結果、そこには「お父さんやめて、痛いよ」と抵抗する女児の声と、父親が性暴力を振るう音が明確に記録されていた。同年代の子供を持つ親として衝撃を受けた村岡氏は、「子供たちを守らないといけない」という使命感に駆られ、子供たちの居場所づくりを決意した。

「音は時に、映像より多くのことを語ります」と村岡氏は指摘する。映像が一方向の画角しか映さないのに対し、音はあらゆる方向の様子を捉えることができるからだ。

小学生の息子を持つ母親からの相談では、「息子がいじめられているのではないか」という懸念があった。ランドセルの中に入れたICレコーダーには、息子が階段から突き落とされる瞬間の音や、相手の「ばーか」という声が録音されていた。相手はいじめを否定していたが、声紋鑑定で一致が確認された。

急増するいじめ問題と音声解析の重要性

本県の公立学校におけるいじめの認知件数は24年度、5万4724件で過去最多を更新。前年度から269件増え、4年連続の増加となっている。小中学生のいじめでは、冷やかしやからかい、悪口などが半数以上を占めており、音声研究所へのいじめに関する依頼も、24年の2件から25年には40件へと急増した。

「そこに何人いるのか、何で殴られたのか。音からわかることは多く、音で救える命もあります」と村岡氏は強調する。「子供に異変を感じたら、守る手段としてICレコーダーなどを活用することも考えてほしい」と呼びかけている。

苦しむ子供を一人でも減らそうと、村岡氏は今日も音に隠れた「真実」に向き合い続けている。音声解析という技術が、いじめや性暴力の証拠を明らかにし、子供たちの安全を守る新たな手段として注目を集めている。