長野県内のリニア中央新幹線工事 現状と課題を徹底解説
長野県内におけるリニア中央新幹線の建設工事は、大鹿村から南木曽町まで延びる52.9キロの区間で着実に進展しています。しかし、地上部分の工事は全体の10%未満に留まり、大部分がトンネル掘削に依存している状況です。JR東海は当初、東京と名古屋間の開業を2027年と公表していましたが、2024年にこの目標を断念。現在では開業時期を「2027年以降」と曖昧な表現に変更しています。
主要トンネル工事の進捗状況
工事が集中しているのは、南アルプストンネル、伊那山地トンネル、風越山トンネル、中央アルプストンネルの四つの大規模トンネルです。静岡県から大鹿村に至る南アルプストンネルの「長野工区」では、本坑の掘削が約40%完了しています(2月末時点)。
大鹿村から豊丘村に跨る伊那山地トンネルは、三つの工区に分かれて作業が進められています。「青木川工区」では本坑掘削が約半分、「坂島工区」では10%まで進捗。特に注目されるのは「戸中・壬生沢工区」で、2025年5月に隣接する坂島工区との貫通を達成。これはリニア本線のトンネル工事において初めての隣接区間接続となり、JR担当者は「大きな節目」と評価しました。
技術的課題と今後の見通し
飯田市の風越山トンネルでは、県内で唯一シールドマシンの活用が計画されています。他の工区で採用されているダイナマイトを使用するNATM工法では、浅層地下水水位への影響が懸念されるためです。JRは2027年5月までに発進坑内の掘削を終え、マシンの組み立てを開始すると表明。組み立てには約2年を要し、完了は2031年末を見込んでいます。
中央アルプストンネルでは、「松川工区」で約40%、「尾越工区」で約10%の本坑掘削が進んでいます。一方、「萩の平・広瀬工区」では本坑掘削に未着手で、非常口の掘削を2025年5月に開始する見通しです。
橋りょう建設と駅周辺整備
大鹿村の小渋川橋りょう(全長200メートル)は2030年の完成を予定。喬木村の阿島北高架橋(全長900メートル)と短いトンネルの掘削工事は2029年の完了を見据えています。
飯田市と喬木村を隔てる天竜川には、全長515メートルの橋りょうが建設中です。3月までに河川内の橋脚4本が完成し、2029年の完工を目指しています。飯田市の県駅(仮称)工事は、関連する土曽川橋りょうを含め2031年末の完了を予定。駅前広場の工事も進められており、2028年度の一部供用開始が検討されています。
しかし、風越山トンネルと中央アルプストンネルを結ぶ松川橋りょう(全長100メートル)は、県内で唯一契約すら結ばれておらず、最も遅れている工事です。JR担当者は「設計等を進めている段階」と説明しています。
残土処理の課題と対策
トンネル掘削に伴う残土処理は大きな課題です。県内では17市町村38カ所(2月末現在)で残土の活用方針が打ち出されており、道路整備や農地のかさ上げなどに利用される計画が目立ちます。
特に問題となるのは、ヒ素などの自然由来の重金属が基準値を超える「要対策土」です。南アルプストンネルや伊那山地トンネルからは約2万4千立方メートルの要対策土が搬出される見込みです。JR担当者は「トンネルを掘削してみないと分からない部分もあるが、今後も要対策土は発生すると見込んでいる」とコメントしています。
これまでに、飯田市の土曽川橋りょう橋脚の基礎材として5千立方メートル、豊丘村本山では伊那山地トンネル坂島工区からの約3千立方メートル、大鹿村の小渋川変電所敷地造成では盛り土工事への利用が決定しています。豊丘村では昨年9月に地権者団体がJRの方針を容認する議案を可決し、大鹿村では2025年7月に工事開始の方針が固まりました。
長野県内のリニア工事は、技術的難易度の高いトンネル掘削が中心であり、残土処理を含めた環境対策も重要な課題となっています。開業時期の延期が発表されたものの、各工区では着実な進捗が見られ、地域との調整を図りながらプロジェクトが推進されています。



