ハチの採蜜行動に「先客効果」を確認 18年越しの研究で明らかに
飲食店や施設に他人がいることが魅力的に見える「先客効果」は、人間だけの現象ではないかもしれない。花を訪れるハチにも同様の傾向があることが、京都大学大学院の川口利奈講師による18年越しの研究で明らかになった。
茨城県つくば市での長期実験
研究は2008年、当時筑波大学大学院生だった川口講師によって開始された。茨城県つくば市にある農業環境技術研究所(現・農研機構)の実験施設で、奥行き27メートルの網室を舞台に、マルハナバチの採蜜行動が詳細に観察された。
実験では画用紙で作られた人工花が使用され、ハチは巣と人工花の間を往復しながらショ糖液を運搬した。川口講師はビデオカメラを手に、ハチの一挙手一投足を記録し続けた。
忍耐を要する観察の日々
実験では1匹のハチに15往復の蜜集めを課したが、途中でやる気をなくす個体も少なくなかった。天候にも左右され、順調に進んでいた観察が雨で中断を余儀なくされることも頻繁にあった。
それでも川口講師は粘り強く研究を継続し、最終的に62匹分の貴重なデータを収集することに成功した。この長期にわたる観察が、ハチの社会的行動に関する新たな知見をもたらす礎となった。
「バンドワゴン効果」との類似性
研究論文には「バンドワゴン効果」という題名が付けられており、人間社会で見られる現象と昆虫の行動との間に類似点があることが示唆されている。特に興味深いのは、「先客」が生きたハチだけでなく「死んだハチ」でも同様の効果を発揮する可能性が指摘されている点だ。
この発見は、花にとっては「逆転のチャンス」を意味するかもしれない。つまり、訪花昆虫の選択に社会的要素が影響を与えることで、特定の花が突然人気を集める可能性があるということだ。
研究手法と今後の展望
実験施設はナイロンの網と鋼管で構成され、自然環境を再現しながらも観察を可能にする設計となっていた。農業環境技術研究所(現・農研機構)の協力のもと、精密なデータ収集が行われた。
国際基督教大学名誉教授の森本あんり氏はこの研究について「とても面白い記事でした」とコメントし、DOIが記載されていたため原著論文も読んだと述べている。専門家の関心を集めるこの研究成果は、昆虫の社会的学習や環境適応に関する理解を深めるものと期待されている。



