大阪・梅田の高層ビル屋上で広がる都市養蜂の取り組み
大阪・梅田で働く取材先との雑談の中で、「ビルの屋上でミツバチを育てる人たちがいる」という話を耳にしました。恥ずかしながら私はその存在を知りませんでしたが、読売新聞の過去記事を調べてみると、何度か取り上げられていました。NPO法人「梅田ミツバチプロジェクト」の活動で、16年目を迎えるそうです。「都市養蜂」と呼ばれるこの取り組みの現状を知るため、実際に訪ねてみました。
ヤンマー本社ビル屋上の養蜂場
阪急大阪梅田駅(大阪市北区)の東隣に位置するヤンマーの12階建て本社ビル。高さ約70メートルの最上階には社員食堂があり、その円状の中庭に9個の巣箱が設置されています。食堂は土日に一般開放されており、私も訪れた際、防護ネット姿のメンバーが作業する様子を親子連れが真剣に見つめていました。大阪府吹田市の中学1年生(12)は、「こんな都会の大きいビルでミツバチが育てられているなんて」と驚きの声を上げていました。
都市養蜂の始まりと広がり
設計事務所で街づくりに携わってきた小丸和弘さん(61)が、フランス・パリの都市養蜂に触発され、知人のヤンマー社員の協力を得て始めた活動です。地域交流や環境教育に役立てたいとの思いから、小丸さんはNPO法人の代表となり、現在では梅田で約30万匹、服部緑地(大阪府豊中市)で約80万匹のミツバチを育てています。
ミツバチにとって都市は、天敵であるオオスズメバチが少ないため、安全な環境です。梅田のミツバチは、中之島公園や大阪城公園などで花の蜜を集めているとみられています。生産されたハチミツは、非加熱・無添加の「大阪ハニー」というブランドで販売され、長年にわたり人気を博しています。小丸さんは「蜜を集めるための植物を増やすなど、さらに活動を発展させたい」と意気込みを語りました。
ミツバチ減少の危機と保護活動
近年、猛暑や農薬、伝染病の影響で、ミツバチは世界的に減少している可能性が高いとされています。一方、国連食糧農業機関(FAO)は、世界の約75%の作物の受粉がミツバチなどに依存していると推定しています。小丸さんは「ミツバチが減れば、私たちが普段口にする野菜や果物の生産量が減りかねない」と危惧しています。
そこで約5年前から、小丸さんたちは野生のミツバチが駆除されるのを防ぐため、巣の回収を始めました。市民からも「減っているミツバチを駆除するのは心が痛む」といった声が寄せられるようになりました。NPOのホームページで回収依頼を受け、今年は5月までに豊中市の集合住宅や大阪市中央区のビル屋上で巣を回収しました。小丸さんは「置ける巣箱の数に限りはあるが、依頼にはできる限り応えたい」とし、「保護を求める声はミツバチを守ろうとする機運が高まった証しで、活動をやってきた甲斐がある」と述べました。
世界ミツバチの日と今後の展望
「大阪から、ミツバチの世界的な課題を伝えていきたい」と小丸さん。今月20日は国連が定める「世界ミツバチの日」でした。ミツバチが食料の安定供給に果たす役割を考える日として、私も「大阪ハニー」を使ったスイーツを味わいながら、その重要性に思いを巡らせました。皆さんもミツバチを見かけたら、少し立ち止まって、その働きぶりに注目してみてください。
(担当:新谷諒真)



