ゲリラ豪雨、体験でわかったリアルな恐怖
集中豪雨などによる水害が心配される季節が近づいてきました。2026年4月、茨城県つくば市にある防災科学技術研究所が一般公開され、大型降雨実験施設で人工的に再現されたゲリラ豪雨を体験する機会が設けられました。この施設は都市防災や土砂災害対策の研究を行う世界最大級の施設です。参加者はヘルメットに雨がっぱ、長靴という「完全武装」で雨中に足を踏み入れ、その恐ろしさを実感しました。(大野孝志)
10分で50ミリの雨量、雨音は「ゴーッ」
航空機の格納庫を思わせる施設は、幅約50メートル、奥行き75メートル、高さ20メートル。配管内の空気を抜くシューッという音とともに、くみ上げられた地下水が天井の約2200本のノズルから降り注ぎます。20分の体験時間に降る水の量は数十トンにも及びます。
約200人の参加者とともに施設内を歩き、2020年6月に埼玉県熊谷市で観測された10分間に50ミリというゲリラ豪雨を浴びました。雨滴がヘルメットに激しく当たり、雨音は「ザーッ」ではなく「ゴーッ」という轟音。他の音を遮り、会話も困難です。舗装された地面から水しぶきが上がり、周囲は真っ白に。恐怖を感じます。メガネは濡れ、フードから滴が落ち、視界は著しく悪化。傘をさしても無意味で、途中で閉じる人も現れました。
「普段から意識すべきこと」とは
水しぶきに囲まれた感覚で、素早く動くことはできません。加えて、寒さが襲ってきます。雨がっぱの中は濡れていないのに、さっきまで暑かったはずなのに。もし町中でこのような雨に出くわしたら、急いで雨宿りするしかありません。逃げ込める場所があれば、ですが。
施設で研究を重ねる酒井直樹上席研究員は、「雨が強くなると、周りの景色は一瞬で変わります。視界が遮られ、聞こえなくなり、体が濡れて動けなくなります」と説明します。体験の意義について、「自分が同じ恐怖を感じた時にどう行動するか、自宅の周りで水がどのように流れるかを、普段から意識するきっかけにしてほしい」と語りました。
「避難訓練のつもりで来た」という市内の小学2年生、眞谷大智さん(8)は、「雨の音がうるさくて、周りの人の声が聞こえなかった」と話しました。この日は約2200人が研究所を訪れ、うち約930人が公開日の一番人気である豪雨体験に参加しました。
これが災害時だったら
しかし、これはアトラクションではありません。施設は広範囲に降雨を発生させられるほか、雨滴の大きさや速度も変更可能です。舗装面や土砂災害、洪水、地盤への水の浸透などを実験する区画に分かれ、建屋がレール上を移動します。雨天時の自動運転の実証やドローンの性能評価、実物大の住宅の浸水対策などを実験するのが本来の目的です。
「体温を奪われるので、かなり疲れますよ」と研究所広報課の若月陽子さん。体験後はどっと疲れ、足が重くなりました。温かいシャワーを早く浴びたいところですが、災害時にはそれもままならないでしょう。
豪雨時の注意点(防災科研による)
【日頃から】
- 防災気象情報を入手する
- ハザードマップで危険箇所を確認する
- 防災備蓄、家の周りの片付け、側溝の掃除などで備える
【家にいたら】
- なるべく外に出ない
- 地下や半地下から地上へ移動する
- 2階以上への垂直避難も検討する
- 斜面側の部屋は避ける
【外にいたら】
- 頑丈な建物に逃げ込む
- 川、用水路、側溝に近づかない
- 雷鳴が聞こえたら屋内へ
【車に乗っていたら】
- 路肩に停めて大雨をやり過ごす
- アンダーパスには入らない
- 冠水した場所は避ける
- 水が押し寄せたら車外に脱出する
防災科学技術研究所について
防災科学技術研究所は、伊勢湾台風をきっかけに1963年に前身の国立防災科学技術センター(東京・銀座)として設立されました。1978年に筑波研究学園都市へ移転完了し、1990年に現在の名称となりました。敷地面積は東京ドーム5.7個分の約27ヘクタール。大型降雨実験施設は1974年に運用を開始し、2014年に機能を強化してゲリラ豪雨の再現が可能になりました。2025年6月には暴風発生装置を新設し、暴風雨環境の再現設備としては国内唯一とされています。その他、兵庫県三木市に巨大地震を再現する「E-ディフェンス」、新潟県長岡市に人工的に降積雪を再現する「雪氷防災実験棟」、全国に地震・津波・火山の観測網などを有しています。



