福島県が生物多様性推進センターを設置、生態系保全へ本格始動
多様な動植物が共存する生態系は、私たちの暮らしを支えるかけがえのない基盤です。身近な自然環境をどのように維持していくかは、すべての県民が自分自身の問題として捉えることが重要です。
豊かな自然がもたらす経済価値と危機的状況
自然に恵まれた福島県では、多様な動植物から多大な恩恵を得ています。相馬市にある松川浦は、アサリなどの水産資源の供給や水の浄化機能を持ち、1年当たりの経済価値は80億円に上ると試算されています。
しかし一方で、県内では動植物の多様性が失われることで生態系が変化し、人の暮らしへの悪影響が生じ始めています。外来動植物の流入により在来種が減少したことで、森林の水を浄化する機能が低下しています。また、里山の管理が行き届かなくなったことで、クマの生息域が広がるなどの問題も発生しています。生態系の保全は待ったなしの緊急課題となっています。
2030年目標達成へ向けた具体的な取り組み
福島県は先月、自然保護課内にふくしま生物多様性推進センターを設置し、生態系の保全に本格的に乗り出しました。日本の参加する生物多様性条約締結国会議が採択した、2030年までに世界の陸と海の30%以上で環境の保全・回復を図る目標「30by30(サーティーバイサーティー)」の達成を目指しています。
保全を図る地域を30%まで拡大することで、生物の絶滅リスクが3割減少すると試算されています。福島県は国立公園が複数あることから、県土に占める保護地域などの割合が28.8%と全国平均より高い水準にあります。しかし、目標達成には猪苗代湖の面積の1.6倍に当たる170平方キロで新たに保全活動を行う必要があります。
民間企業や個人の参加を促す自然共生サイトの拡大
このため推進センターは、民間の企業や団体、個人が環境の保全や回復に取り組む「自然共生サイト」(OECM)の拡大を図ります。OECMは国が認定する制度で、県内では現在9カ所が登録されています。企業や民間団体などが人工林で水源の保全を行ったり、ホタル増殖に取り組んだりしています。
推進センターはOECM設置を検討する企業などに専門家を派遣し、認定の要件を満たすための調査や保全活動を支援します。センターは民間の登録に向けた動きを丁寧に後押しすることで、OECMの意義などをほかの企業や団体にも周知し、目標達成につなげなければなりません。
個人レベルでもできる生態系保全の取り組み
生態系の保全に向けて個人や民間企業ができる取り組みは、OECMに限りません。日頃から環境に配慮した製品を選ぶこと、外来種のペットや植物を安易に野外に捨てないことなども、自然が持つ機能の維持につながります。
具体的な個人レベルの取り組みとしては以下のようなものがあります:
- 環境に配慮した製品の選択と購入
- 外来種のペットや植物の適切な管理と処分
- 地域の清掃活動や自然保護活動への参加
- 在来種の保護や植樹活動への協力
一人一人が自分のできることを知り、実践することが求められています。豊かな自然環境を次世代に引き継ぐためには、行政だけでなく、企業や個人の協力が不可欠です。福島県の生物多様性推進センターは、こうした多様な主体をつなぐ役割を果たすことが期待されています。



