神石高原町、ふれあいタクシーのデジタル化で財政圧迫に対処
広島県神石高原町は、高齢者や障害者向けに運行する「ふれあいタクシー」事業をデジタルトランスフォーメーション(DX)化する方針を固めました。この取り組みは、地域の交通空白を解消する一方で、膨らみ続ける事業費が町財政を圧迫していることが背景にあります。町は、車両に設置する端末から利用データを収集し、効率化を図ることで、持続可能な交通システムの構築を目指しています。
事業費の増大が町財政に重くのしかかる
ふれあいタクシーは2017年度に運行を開始し、町在住の75歳以上や障害者、妊婦などを対象に、町内の移動に限って利用料を補助しています。具体的には、乗車1回につき900円(医療機関への通院は600円)を超える分を町が負担し、月20回まで利用可能です。利用者からは、乗り合いタクシーと異なり自宅から目的地へ直行できる点が好評で、2024年度までの直近3年間では年間延べ約23,000人が利用しています。その内訳は、約4割が通院目的、約3割が買い物での利用となっています。
しかし、課題は町が独自財源で賄う事業費の膨張です。2024年度と2025年度では6,000万円を超え、新年度当初予算案では6,100万円が計上されています。これに加え、路線バスの維持補助金980万円や町営バスの運行費1,300万円なども含め、住民の移動手段確保のための支出は、一般会計総額108億円の約1%に達する見込みです。町の高齢化率は2026年2月末時点で50.64%に上り、今後もふれあいタクシーの需要増加が予想される中、財政負担の軽減が急務となっています。
デジタル技術を活用した効率化の具体策
町は事業の効率化を図るため、デジタル技術の導入を決定しました。新年度当初予算案には、運行を担うタクシー会社8社の車両に、マイナンバーカードを読み取れる端末を整備する費用として1,200万円を計上しています。この端末により、利用者個別の運行記録をデジタル化し、タクシー会社への精算時の事務手続き負担を軽減します。さらに、収集したデータを分析し、事業の見直しや改善に活用する計画です。
町総務課の担当者は、「昨年は燃料費の高騰を受け、タクシーの初乗り料金も値上げされた。町の財政状況を考慮し、2027年度以降に自己負担額を一定程度引き上げたい」と明かしています。これにより、利用者負担の見直しも検討されており、持続可能な運営を目指す姿勢が示されています。
交通インフラの脆弱さと今後の展望
神石高原町は標高400メートルを超える地域に位置し、鉄道がなく、2004年の合併時に21系統あった路線バスも次々に廃止されています。現在、路線バスは3系統のみで、いずれも赤字状態に陥っており、日曜や祝日には全系統が終日運休する状況です。こうした交通空白を補うため、町は町営バスを運行する一方、ふれあいタクシーを軸とした交通網の整備に力を入れてきました。
入江嘉則町長は、「町立小中学校のスクールバスを運行してくれているタクシー会社の経営を支える意味合いもある。公共交通に乏しい中山間地域の自治体として、持続可能な形を模索していきたい」と語っています。町は、デジタル化によるデータ収集と分析を通じて、効率的な事業運営を実現し、高齢化社会に対応した交通システムの確立を目指す方針です。



