マンション修繕会議に潜む「住民なりすまし」、巧妙化する手口と対策の課題
マンションの大規模修繕委員会において、工事会社の従業員が住民になりすまして参加する事例が明らかとなり、社会問題として浮上している。国土交通省はこれを受け、マンションの「標準管理規約」を2025年10月に改正し、管理組合の役員らに対する本人確認の実施を促す注釈を追加した。多くのマンションが規約策定の参考とするこの改正は、なりすまし防止に向けた第一歩と評価される。
本人確認だけでは不十分、本名を名乗る巧妙な手口
しかし、朝日新聞の取材によれば、区分所有者でもなく実際に居住してもいない人物が、本名を名乗った上で修繕委員会に参加していた事例が判明している。このケースでは、単純な本人確認だけでは不正を見破ることができず、新たな対策の必要性が浮き彫りとなった。
マンション管理士としても活動する横浜マリン法律事務所の佐藤元弁護士は、「どこのマンションでもなりすましの問題は起こり得る」と指摘。国交省の規約改正により、管理組合役員や修繕委員会委員の本人確認は実施しやすくなったが、それだけでは限界があると述べる。
専門家が提言する追加対策、登記確認や資格要件の厳格化
佐藤弁護士は、より効果的な対策として以下の点を挙げている。
- 役員や委員の就任時に、登記情報などを用いて実際の所有者を確認する手続きを導入する。
- 就任時の勤務先確認を義務付け、規約に資格要件を居住者のみに限定する条項を盛り込む。
- 不適正な業者に「面倒だ」と思わせることで、参入を阻む心理的障壁を高める。
これらの措置により、一定の抑止効果が期待できるとされる。ただし、業者自身が部屋を購入して区分所有者となるケースや、従業員が自ら所有者となっている場合には、対策が困難となる点も認めている。
背景に潜むマンション修繕市場の競争と倫理問題
なりすまし問題の背景には、マンションの大規模修繕市場における過剰な競争と倫理の欠如が指摘されている。工事会社が受注を確保するため、住民を装って委員会に潜入し、自社に有利な情報を収集したり、決定に影響を与えようとする事例が報告されているのだ。
この問題は単なる不正参加にとどまらず、修繕工事の質や費用に直接的な影響を及ぼす可能性があり、住民の財産と安全を脅かす深刻な課題となっている。管理組合側も、規約の見直しや監視体制の強化を通じて、積極的に対応することが求められる。
佐藤弁護士は、「管理規約はマンションの基本ルールであり、改正を機に見直す動きが広がるだろう。しかし、根本的解決には、業界全体のモラル向上と、住民自身の意識改革も不可欠だ」と強調している。



