水道鉛管の完全撤去、国が3年後までに計画策定100%目標を設定
国は、鉛製給水管(鉛管)の完全撤去に向けた対策を強化し、事業者(自治体など)の交換計画策定率を約3年後までに100%とする目標を定めました。これは、鉛管が多く残存する事業者に意識改革を促す狙いがあります。しかし、ポリエチレン管などへの交換費用に対する補助制度など、経済的な対策は講じられておらず、財政が厳しい中小事業者が順調に撤去を進められるかは不透明な状況です。
国の取り組みと自治体の現状
国は「鉛管早期ゼロ」を掲げてから20年が経過しましたが、約200万件の鉛管が依然として残存しています。この状況を打開するため、昨年7月、鉛管が残存しながら計画を未策定の事業者を水道法に基づく立ち入り検査の対象に追加しました。さらに、10月からは国土交通省職員が事業者を訪問し、早期の計画策定や交換を促しています。
国土交通省の担当者は、「鉛管の削減は健康被害の防止だけでなく、漏水リスクや維持管理費用の低減にもつながる」と強調し、事業者に対して計画策定や交換の促進、住民への周知を求めています。
財政難に直面する自治体の声
一方、大分県竹田市では、予算確保が困難なため交換計画を作成しておらず、2024年3月時点で給水契約数の約4割にあたる約1500件の鉛管が残っています。2006年3月の約2000件から約500件しか減っていない状況で、担当者は「新たな対策は難しい。今後も老朽管の更新時などに交換する現行の対応を続けることになるだろう」と明かします。
山口県岩国市も計画を未策定で、約1万3000件の鉛管が残存しています。公道埋設の鉛管は事業者が交換を進めますが、宅地では私有財産のため所有者の自己負担となります。このため、市は2023年に工事費の助成制度を創設し、上限15万円で市民の交換を促しています。計画策定も今後進める方針です。
行政主導の撤去を効率的と判断した山口県宇部市は、2003年に計画を策定し、約6000件の撤去を進めていますが、完了は2035年頃と見込まれています。担当者は「市の財政も厳しく、国でも積極的な財政的支援を検討してほしい」と訴えています。
専門家の指摘と今後の課題
昨年12月の有識者検討会では、「事業者や住民の負担を減らすため、国の経済的な支援策が必要」「行政側は住民の理解を得られる丁寧な説明をすべきだ」といった意見が出されました。
水道事業に詳しい早稲田大学の松井佳彦・研究院客員教授(環境リスク工学)は、「残存状況の把握や交換の必要性の周知など、すぐに始められる取り組みもある。まずは事業者が計画を策定して動き出すことが重要だ」と指摘します。その上で、「国も事業者向けのサポートを充実させるなどして、『鉛管ゼロ』を目指す機運を高めていくべきだ」と述べています。
このように、国の目標設定は前進ですが、財政支援の欠如が中小事業者の撤去計画を阻んでおり、早期解決には国と自治体の連携が不可欠です。



