鳥羽沖衝突事故、釣り客が語る九死に一生の体験「気づいたら海の底…クーラーボックスが流れてきて」
鳥羽沖衝突事故、釣り客が語る九死に一生の体験

鳥羽沖衝突事故、釣り客が語る九死に一生の体験

三重県鳥羽市沖で20日昼に発生した貨物船「新生丸」と遊漁船「功成丸」の衝突事故から一夜明けた21日、奇跡的に救助された釣り客たちが、事故当時の生々しい状況を報道陣に語りました。眼前に迫る貨物船の恐怖、海中に投げ出された絶望、そして思いがけない救命具となったクーラーボックスにしがみつくまでの緊迫の瞬間が明らかになりました。

「貨物船がどんどん近づいてきた…もう避けられへん」

事故当時、功成丸の右舷側で釣りを楽しんでいた松阪市内の70歳男性は、緊迫した状況を振り返ります。「貨物船はとにかくどんどんと近づいてきた。『危ない。船が来たぞ』という叫び声が聞こえたが、もう避けられへんと思って身構えた」と語りました。男性は新生丸が衝突した衝撃で海に投げ出され、気づいた時には既に海面に浮かんでいたといいます。

「もうダメかな」と諦めかけたその瞬間、流れてきたクーラーボックスが救命のきっかけとなりました。救命胴衣を着けていたものの、近くにいた別の男性と2人でクーラーボックスにしがみつき、救助を待ちました。約10分後、別の遊漁船が接近し、船上の5、6人が力を合わせて引き上げてくれたのです。

衣服が海水を吸い重く…寒さで震えが止まらず

救助された男性は、衣服が海水を吸って重くなっていたこと、当時の水温が14度ほどで寒さから震えが止まらなかったことを明かしました。「周囲と話すこともできなかった」という状態から、「気をしっかり持たんといかん」という周囲の励ましの声に支えられ、毛布にくるまって暖を取ったといいます。

男性はあごや腰、ひじを打撲したものの軽傷で済み、「クーラーボックスが浮袋代わりになったのかもしれない。助けてくれた遊漁船の人たちがジャケットやズボン、長靴を脱がせてくれて、一命を取り留めることができた」と感謝の言葉を述べました。

「気がついたときは海の底にいた」別の釣り客の証言

名古屋市の72歳男性は功成丸の左舷側に乗船していました。衝突の瞬間は目撃していませんが、乗船客が「船長、船長」と大声で呼んでいたのを覚えているといいます。「何を騒いでいるのだろうか」と思っていると、突然の衝撃があり、「気がついたときは海の底にいた」と証言しました。

救命胴衣が膨らみ、明るい方を目がけて泳ぐと海面に浮上。別の遊漁船に救助されましたが、事故当時は海に餌をまき、釣り糸を垂らして釣りを楽しみ始めたばかりだったといいます。右手の甲の皮がむけ、親指のけんが切れる怪我を負いました。功成丸の利用は久しぶりだったが「こんな事故に巻き込まれるとは」と驚きを隠せない様子でした。

事故の被害と調査の進展

この衝突事故では、松阪市の男性2人が溺死し、四日市市や伊勢市、愛知県一宮市などの60~80歳代の男性10人が重軽傷を負っています。鳥羽市国崎漁港では21日、功成丸の回収に向け、船が沖合に次々と出航しました。

同市の中之郷岸壁では、鳥羽海上保安部の担当者が新生丸の実況見分を実施。船首下部の損傷部分を撮影し、大きさを測定していました。22日は国の運輸安全委員会の船舶事故調査官が現地に入り、新生丸の乗組員から聞き取りを行う予定となっています。

事故から一夜明けた現場では、救助活動と並行して事故原因の究明が急ピッチで進められています。遊漁船功成丸と貨物船新生丸の衝突がどのような経緯で発生したのか、詳細な調査結果が待たれる状況です。