バレエ界にホール不足問題が深刻化している。2026年5月7日、上野の東京文化会館が大規模改修のため約3年の長期休館に入った。これにより、首都圏で本格的なバレエを上演できるホールがますます不足し、ダンサーたちの活動の場が危機に瀕している。
東京文化会館の休館とその影響
東京文化会館の大ホールは2303席を備え、舞台裏も広く、大型セットを要するバレエ上演に最適だった。海外バレエ団の招請公演には採算面から2000席以上が重要であり、同館の休館は大きな打撃となっている。
昨年4月からは同規模の神奈川県民ホール(定員2493人)が休館し、渋谷のオーチャードホール(2150席)も来年1月から休館する。これら3つの主要ホールが同時期に使えなくなる事態は前例がない。Kバレエトウキョウなど、これらのホールを本拠地とする団体も大きな影響を受けている。
代替劇場の不足と関係者の懸念
東京バレエ団を運営し、招請公演も行う日本舞台芸術振興会(NBS)は長年東京文化会館を利用してきた。田里光平事務局長は「代替の劇場は都内にないので、使える劇場で機構上可能な演目を上演していく」と述べ、厳しい状況を認めている。
関係者が期待するのは、文化庁が始めた「劇場・音楽堂等と芸術団体との連携による地域活動基盤形成支援事業」だ。これは公演の場が失われる一方で鑑賞機会が東京に集中する問題に対応するため、実演団体と地方の劇場との連携を支援する施策である。しかしNBSは5件申請したが、採択されたのは1件のみだった。
新たな公演場所の模索
新国立劇場オペラパレス(1806席)が借りられたため、東京バレエ団は「オネーギン」などの大作を上演できるものの、困難は続く。田里事務局長は「公演数が減ってしまう。地方や海外公演にこれまで以上に注力する方針」と語る。
郊外展開の試金石として注目されているのは、7月に招く英国ロイヤル・バレエ団の埼玉・川口総合文化センター・リリア(1943席)での公演(5回)だ。これが興行的に成功すれば、今後の道が開ける可能性がある。一方、谷桃子バレエ団は千葉県文化会館で5月に行った4公演を完売させ、地方公演の可能性を示している。
ダンサーの未来への危機感
ホール不足問題は、昨今実力と人気を増してきたバレエ界の勢いを削ぎかねない。東京バレエ団の斎藤友佳理団長は「ダンサーはどこで生きればいいのか。こうなると分かっていて何年も前から運動したのに、声が届かず今日がある。3年間で日本の劇場文化が大きく変わる気がする」と憤る。
約10年前にも同様の問題が起きたが、具体的な対策は見られなかった。今こそ関係者の訴えに耳を傾け、官民一体で改修時期を調整する取り組みが必要ではないだろうか。



