生活保護「自宅を売らないと受けられない」は誤解?実際のルールを検証
生活保護「自宅売却必須」は誤解?実際のルールを検証

「持ち家があると生活保護を利用できない」という不安から、生活に困窮していても申請をためらう人は少なくない。しかし、実際のルールは必ずしもそうではない。東京都内で暮らす62歳の女性は、亡き両親が残した一軒家で猫と暮らしている。きょうだいからの暴力で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患い、働けなくなった。生活保護を申請しようとしたところ、社会福祉協議会の職員から自宅の売却や引っ越しを勧められたという。

生活保護の資産要件とは

生活保護法では、保護を受けるために利用可能な資産を活用することが求められる。しかし、厚生労働省の「生活保護の実施要領」では、宅地や家屋の保有を認める一方で、「処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものは、この限りではない」と規定されている。

保有が認められるケース

厚労省保護課の担当者は「処分しても高額でないならば、保有することになる」と説明する。具体的な目安として、例えば4歳の子がいる30代と20代の夫婦3人世帯が23区内に住む場合、10年間で受け取る生活費と住宅費の基準額の合計(約2000万円台半ば)と同等であれば、保有が認められる可能性が高い。ただし、担当者は「一概には言えない。地域の持ち家率や意識も考慮され、自治体の福祉事務所で判断する。2000万円以上だからといって必ずしも処分が必要とはならない」と補足する。

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現場の声と課題

ある自治体のケースワーカーは「持ち家でも、困窮していれば保護は開始できる。その後も売却指導は行うが、それは困窮状態を放置してよい理由にはならない。社会福祉協議会の職員が女性に資産活用を求めて申請を思いとどまらせたなら、人権侵害になり得る」と指摘する。

代替制度の存在

自宅を売却せずに資金を調達する方法として、リースバック(自宅を売却後、賃貸契約で住み続ける)やリバースモーゲージ(自宅を担保に生活資金を借り入れる)などの制度もある。

ドイツとの比較

最低生活保障制度の日独比較に詳しい法政大学大原社会問題研究所の布川日佐史名誉研究員によると、ドイツでは住居(4人以下の世帯で140平方メートルまで)は資産価値を問わず保有が認められている。「人としての尊厳を傷つけず、制度を利用しやすい方が自立しやすいという考え方だ」と解説する。

日本の現状

日本では預貯金などを使い果たし、ほぼ無資産の状態になるまで保護の利用を待たされる実態がある。布川氏は「その間に病気が進んだり、家を失ったりして、自立に向けて頑張る条件を失ってしまう」と警鐘を鳴らす。

女性のその後

記事掲載後、記者の元には女性への応援の言葉や支援物資が届いた。女性は「たくさんの方の温かさに触れ、ほっとしました。でも療養中で、ご恩や配慮を糧にしてもうまく動き出せずにいます」と話している。

本記事は読者の投稿や情報提供をもとに取材した「ニュースあなた発」企画の一環です。生活に関する疑問や不正の告発など、広く情報を募集しています。

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