緑内障の視野障害、交通事故リスク高める 無自覚のまま運転続ける高齢者も 免許更新制度の見直し必要
緑内障の視野障害、交通事故リスク 免許更新制度見直し必要

緑内障などで視野の見えない部分が徐々に広がる視野障害。運転中に飛び出しに気付くのが遅れるなど、交通事故のリスクがあるが、自覚症状が少なく生活に欠かせないとして運転を続けるケースが少なくない。現行の運転免許制度では多くの人が視野検査を受けずに免許を取得・更新できており、専門家は制度見直しの必要性を指摘している。

死亡事故を起こした79歳男性のケース

岐阜市の男性(79)は、緑内障と診断されながら運転を続け、2024年9月に死亡事故を起こした。交差点を時速約10キロで左折したところ、82歳の女性が運転する自転車に衝突。女性は頭を強く打ち、3週間後に亡くなった。男性は「衝突するまで女性がいることに気付かなかった」と振り返る。

男性は元トラック運転手で、退職後の60代前半に緑内障と診断された。緑内障は40歳以上の20人に1人が罹患する病気で、高齢になるほど発症率が高い。視野の中心部分の視力は保たれることが多く、自覚しにくいのが特徴だ。

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診断後も「車で飯を食ってきた。メガネをかけたこともない。車なしの生活は考えられない」と運転を続けた。死亡事故の4カ月前には自転車と軽い接触事故を起こし、免許返納を考えたこともあった。しかし、車内で見つけた高齢者講習の修了証明書を見て「まだ運転できる」と思い直し、更新手続きを選んだ。

視力検査では右目が基準に満たなかったが、左目の視力が良く、「水平視野が左右150度以上」の条件を満たしたため更新が可能だった。しかし、実際には右目はほとんど見えておらず、更新から3カ月後に死亡事故を起こした。女性は右側から横断してきていた。

男性は自動車運転処罰法違反(過失致死)罪に問われ、岐阜地裁は2025年6月、禁錮2年、執行猶予3年の判決を言い渡した。視野障害を自覚しながら確認を怠った過失が認定された。男性は「更新できたから問題ないと思った」と振り返る一方、「どうしてあの時、免許を返納しなかったのか。悔やんでも悔やみきれない」と語る。

「視力が良ければいい」という誤解

日本緑内障学会名誉会員でたじみ岩瀬眼科(岐阜県多治見市)の岩瀬愛子院長は、「視力さえ良ければいいと考える人が非常に多い。視力検査だけでなく、視野検査を全員受けるのが望ましい」と指摘する。

現行の免許制度では、視力が一定以上あれば視野検査は行われない。中心視野が保たれる緑内障などでは、視野障害に気付かないまま免許の更新ができる場合がある。視野検査をする場合も水平検査のみで、岩瀬院長は「信号や標識、周りの状況を認識するには、全体の視野を検査する必要がある」と上下の測定も求める。

70歳以上を対象とした高齢者講習では視野検査があるが、合否判定ではなく自覚を促すのが主な目的だ。2019年から上下左右の視野が測れる検査器が導入されたが、コスト面などの課題から、会場によっては水平視野のみの検査器が使われているという。

岩瀬院長は、緑内障と診断されたら運転できないという考えは大きな誤りだと説明。早期発見につながる定期的な眼科受診を呼びかけ、「大事なのは見えないところを自覚し、注意を向けることだ」と話す。

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