社会の出来事を見つめ、石版画に描く法廷画家がいる。京都精華大の特任講師で、報道向けの法廷画家としても活動する松元悠さん(40)は、傍聴したり関心を持ったりした事件を徹底的に調査し、現場や関係地を訪れた上で、リトグラフ(石版画)を制作している。「記者でも、やじ馬でもない」という独自の立場から社会を見つめ、創作活動を続けている。
創作のきっかけは東日本大震災
松元さんが社会事件を石版画の題材にするようになったきっかけの一つは、2011年の東日本大震災だ。テレビの画面越しに見つめた被災地を遠い世界に感じたという。さまざまな社会問題との距離を縮めようと、創作の題材にすることを思い立った。
現場観察を重視する独自の手法
松元さんは事件の現場を訪れるが、それは事実を突き詰める取材ではなく、観察と位置づけている。当事者には直接接触せず、追いかけている人の本性は分からないと語る。そのため、作品に登場する人物は全て、松元さん自身の自画像に統一するという独自のルールを設けている。
松元さんの代表作の一つが「蛇口泥棒」。この作品は、実際に起きた事件を基に制作された。松元さんは事件の背景や現場の雰囲気を丹念に調べ上げ、石版画という手法で表現している。
法廷画家としての経験が創作に生きる
松元さんは報道向けの法廷画家としても活動しており、裁判の傍聴や法廷スケッチを手がけている。その経験が、社会事件を石版画で表現する創作活動にも生かされている。法廷画家として培った観察眼や描写力が、作品のリアリティーを高めている。
松元さんは今後も、社会の出来事を独自の視点で見つめ、石版画という表現方法で発信し続ける考えだ。



