栃木県の強盗殺人事件、偽画像がSNSで拡散
栃木県上三川町で発生した住人女性殺害事件を巡り、パトカーの後部座席に乗せられた女性の画像が「容疑者の一人」としてSNS上で広く拡散されている。しかし、県警幹部によれば、この画像は事件とは無関係であり、生成AI(人工知能)によって作成された可能性が高いという。専門家は、容疑者に対する誤ったイメージが流布することの危険性を指摘している。
事件の概要と逮捕者
今回の強盗殺人事件では、16歳の少年4人と20代の夫婦の計6人が逮捕されている。逮捕された女性は夫婦の妻(25)のみである。
SNSで拡散された偽画像
記者が現場付近で取材中、70代の女性がスマートフォンの画像を見せてきた。その女性は「女の人の入れ墨すごかったですね。まだ写真見てませんか?」と語り、友人から「指示役の女の人」として共有された画像だと説明した。画像には、パトカーの後部座席に座り、中指を立てるマスク姿の女性が写っており、左手の甲には入れ墨があった。70代女性は逮捕された容疑者本人だと思い込み、友人に「やっぱり怖いね」と返信したという。
同じ画像はSNS上で広く拡散され、「強盗殺人事件」「指示役」「25歳の女」などの字幕が付いたものもあった。ある投稿は18日午後時点で約40万回表示され、1万以上の「いいね」を獲得していた。
警察による否定と画像の矛盾点
しかし、警察関係者は画像の真偽を疑問視している。画像に写ったパトカーは後部ドアに「警視」の文字があり、警視庁の車両のように見える。ところが、警視庁関係者によれば、正規のパトカーとは文字の位置が異なり、容疑者を一人で後部座席に乗せることは原則ないという。また、座席の色は画像では白っぽいが、実際は黒だと指摘する。栃木県警の捜査幹部は「この画像の女性は容疑者ではないように見える」と述べ、そもそも妻の移送にパトカーは使用しておらず、画像は偽物だと認識を示した。
実際に逮捕された妻は5月19日朝に送検され、記者が確認したところ、画像とは異なり左手の甲に入れ墨はなかった。
AI生成の可能性と識別結果
拡散された画像の中には、右下にGoogleのAI「Gemini」で生成・編集されたことを示すロゴ(ウォーターマーク)が入っているものもあった。画像がAIで生成・編集されたかどうかを識別できる「SynthID」機能で調べたところ、「大部分または全体がGoogleのAI技術によって生成、あるいは編集されたものである」と判定された。また、画像の女性を複数の検索サイトで探したが、類似画像は見つからなかった。
専門家の警告
報道ベンチャー・JX通信社の米重克洋代表取締役は、「偽の画像であっても容疑者の悪いイメージを作り拡散させることは、容疑者の人権侵害になる」と指摘する。「誰かの権利を侵害する可能性があると認識し、安易に画像を作って投稿しないことが大切だ」と述べた。また、生成AIの進化により、誰でも簡単に高品質な画像を作成できるようになり、「自力で見抜くことは難しくなっている。SNSで切り取られて流れている画像は事実でない可能性があることを常に頭に入れることが大切だ」と警鐘を鳴らしている。



