執行猶予中にバイト先の商品券を盗んだ27歳男、コロナ禍で狂った人生の歯車
執行猶予中に商品券窃盗、27歳男に猶予付き判決

東京地裁の531号法廷で5月26日、アルバイト先のファストフード店から2万円分の商品券を盗んだとして窃盗罪に問われた27歳の男に対し、加藤貴裁判官は「主文。被告人を拘禁刑1年に処する。5年間その刑の執行を猶予し、保護観察に付する」と判決を言い渡した。5年は法律で定められた執行猶予期間の最長であり、被害額2万円の窃盗事件としては異例の長さだ。

大学時代からの借金とコロナ禍

男の人生の歯車が狂い始めたのは大学2年生のころ。部活動の遠征費や生活費をアルバイトで賄っていたが、2020年のコロナ禍でバイトができなくなり、クレジットカードの利用限度額に達して借金をするようになった。2022年には学内で窃盗未遂事件を起こし退学処分に。その際の借金は母親が返済したが、男には親にも打ち明けられなかった別の借金が90万円近く残っていた。

大学を辞めた後、男は一人暮らしをしながらファストフード店でアルバイトを続け、休日にはスキマバイトもして返済に努め、「なんとかなる」と考えていた。しかし2025年2月、バイト先で社会保険に加入したことで保険料の支払いが発生し収入が減少。さらに風邪で勤務できない日もあり、クレジットカードの支払いに窮するようになった。

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持病の発作と追い詰められた生活

商品券に手を付ける直前には、勤務中に持病のてんかんで倒れ入院。その費用が家計をさらに圧迫した。借金やクレジットカードの未払い金は約190万円に膨れ上がり、家賃の支払いも滞りがちに。父親とは折り合いが悪く相談できず、母親に助けを求めても断られた。

2025年10月初旬、バイト代が支給されたが、家賃の一部や借金の返済に充てると残金は数千円に。家賃の滞納が2万円分、光熱費の滞納が1万5000円ほどあり、「このままでは電気を止められる」と焦った男は、10月20日午前6時、大田区内のバイト先の金庫を開け、5000円分の商品券を盗み、金券ショップで換金。翌早朝にも1万5000円分を盗んだ。犯行はすぐに発覚し、男は以前からレジから金を抜いたり廃棄品を持ち帰ったりしていたことも告白。11月に解雇され、2026年3月24日に起訴された。

執行猶予期間中の再犯と裁判

男は2023年1月に窃盗未遂罪で懲役1年執行猶予3年の判決が確定しており、今回の犯行は猶予期間中だった。執行猶予期間中の再犯は、期間満了日までに起訴されると執行猶予が取り消される可能性が大きいが、男の起訴は期間満了後の2026年1月31日を過ぎてからだったため、辛くも取り消しは免れた。

初公判で男は起訴内容を認め、検察官の「執行猶予中に罪を犯せば刑務所に入らねばならない可能性もあることは分かっていたね」との問いに、「生活費や予想外の出費で追い詰められていた。言い訳にしてはいけないが、自分の弱さだった」と述べた。

更生への道と判決

男は現在、別のファストフード店で正社員として働き、近く店長に昇格する見通しで、必要な資格取得の準備も進めている。また、今回の事件を機に父親との関係も修復し、毎日のように電話するようになったという。

判決で加藤裁判官は「十分とは言えないが、更生に向けた態勢が一定程度整ったと見ることができる。社会内での最後の立ち直りの機会として執行猶予を付けた」と述べ、男の更生に期待を寄せた。

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