「先生という言葉が出てくるだけで怖い」元教員による性暴力被害の実態
2026年2月20日、札幌地裁(守山修生裁判長)は、北海道内の私立高校に勤務していた元教員の男性による性加害で精神的な苦痛を受けたとして、元生徒の女性が学校側に1980万円の損害賠償を求めた訴訟の判決を言い渡しました。裁判所は原告の請求を一部認め、元教員に対して1100万円の支払いを命じる判断を示しました。
優位な立場を悪用した「グルーミング」を認定
判決は元教員が教員という立場の優位性を悪用したことを明確に認定し、「原告の性的自己決定権を侵害した」と厳しく指摘しました。特に注目されるのは、女性側が訴えていた「グルーミング」の認定です。グルーミングとは、性的な目的で子どもを手なずける行為を指し、裁判所はこの行為の存在を認める形となりました。
判決文によれば、女性は高校1年生の時から当時教員だった男性から性被害を受け、その被害は卒業後も継続しました。この経験により、女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。進学した大学に通うことが困難となり、最終的には除籍処分を受けるに至りました。
未成年の判断能力と立場の不均衡を重視
裁判所は判決理由において、「女性が当時未成年であり、性行為が心身に及ぼす影響を判断する能力が十分ではなかった」と指摘しました。さらに、生徒と教員という関係性、そして年齢差といった要素を総合的に考慮すれば、「元教員が女性に対して明らかに優位な立場に立っていた」と述べています。
その上で、元教員は女性の自己肯定感の低さなどに付け込み、優位な立場を確立しながら性的要求に応じさせたと認定。女性の意思に反する性行為が行われたとして、その違法性を結論づけました。
「洗脳に近いようなことが行われていた」被害者の証言
判決前の取材に対し、女性は「洗脳に近いようなことが行われていた」と当時を振り返りました。被害が長期化するにつれ、抵抗する気力は次第に失われていき、当時は「自分のせいだ」と誤って思い込んでいたと語っています。
一方、元教員側は「女性が周囲に助けを求めることはしなかった」などとして、完全な同意があったと主張していましたが、裁判所はこの主張を退けました。
学校側の責任は認められず
女性は学校側に対しても、使用者責任があると主張していました。しかし判決は、被害行為が「授業など教員の職務と直接関連しないもの」であるとして、学校側の責任を認めませんでした。
この判決は、教育現場における信頼関係が悪用された性暴力の深刻さを浮き彫りにするとともに、被害者が受けた心身的な影響の重大性を司法が認めた重要な事例となりました。女性は現在も「先生という言葉が出てくるだけで怖い」と感じるほど、深いトラウマを抱え続けています。



