「痩せなきゃ」の呪縛から解放へ 元五輪選手・室伏由佳が語る「ウェルボディ」の重要性
「痩せなきゃ」の呪縛から解放へ 室伏由佳が語る健康

「痩せなきゃ」の社会的呪縛 元五輪選手が語る健康への警鐘

「痩せたい」「太っていると言われたくない」──。健康上問題がなくても、そう願う女性は少なくない。現代日本では、20代女性の約2割が「痩せ」の状態にあるとされ、その健康リスクが専門家から危惧されている。元オリンピック選手で、現在は順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授を務める室伏由佳氏(49)は、この問題に警鐘を鳴らす一人だ。

低年齢化する痩せ願望と深刻な健康リスク

室伏氏は東京新聞の音声番組「新聞記者ラジオ」にゲスト出演し、女性が心も体も健やかで満たされた状態である「ウェルボディ」の重要性を強調した。痩せ願望は今や低年齢化しており、ある調査では小学1年生の女児の約36%が「痩せたい」と回答しているという驚くべき実態が明らかになっている。

「日本は同調圧力が強く、体形への言及も多い社会です」と室伏氏は指摘する。自身もアスリート時代、「男みたいな腕」「すごい肩幅」といった体形に関する言葉に悩んだ経験があるという。10代の頃には微妙なダイエットも試みたが、現在はその危険性を強く認識している。

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「女性の低体重・低栄養症候群」という新たな疾患概念

国の2024年調査によると、体格指数(BMI)が18.5未満の「痩せ」に該当する20代女性は17.1%に上る。これを受け、日本肥満学会は2025年、新たな疾患概念として「女性の低体重・低栄養症候群(略称FUS)」を公表した。これは低体重や低栄養を背景に、体調不良や代謝異常といった健康障害を合併している状態を指す。

室伏氏はその危険性を具体的に説明する。「痩せすぎると栄養が不足し、貧血や生理不順を招くだけでなく、骨密度が低下して骨折リスクが高まります。一生の骨量を獲得できるのは18歳ごろまでですから、若い時期の栄養状態が将来の健康を左右します。糖尿病のリスクも懸念されます」

体重計から筋肉量へ 意識改革の提案

では、数字の呪縛からどのように逃れればよいのか。室伏氏は「バロメーターを、体重計から筋肉量へ変えられないでしょうか」と提案する。「筋肉は将来楽しく生きるための貯金です。体重と一緒に筋肉まで落ちると、かえって太りやすくなる悪循環に陥ります」

ダイエットに励む人々について、室伏氏は「勤勉性が高い」と評価しつつ、「自分を全否定する必要はなく、そうしたいいところを違う方向に向けていくと、人生も豊かになると思います」とアドバイスする。体形を中傷された場合の対処法としても、「かわし方を考えてみましょう」と提案。「立派な背中」と言われたら「人生が詰まってますから」とポジティブに返すなど、受け止め方を変える工夫が有効だという。

社会調査が示す痩せ願望の実態

東京新聞が2026年3月に実施した読者モニターとSNSを対象としたアンケートでは、回答者の8割が「自身や身近な人で『痩せたい』と願っている人がいる」と回答した。21〜87歳の241人が回答し、女性が6割、男性が4割を占めた。

痩せ願望を抱くきっかけとしては、学校や家庭、職場で体形をやゆされた経験が多く挙げられた。「服が入らないから」「健康診断で指摘された」といった声もあった。体形に関する周囲の言葉で傷ついた経験は全体の4割に上り、男女別では男性3割、女性5割と、女性の方がより強い影響を受けている実態が浮き彫りになった。

特に注目すべきは、「痩せたね」をほめ言葉として使ったことがあると答えた人が6割以上に達した点だ。67歳女性は「自分も言われるとうれしかった」と振り返り、この言葉が無意識のうちに痩せ願望を助長している可能性を示唆している。

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健康リスクを承知の上でのダイエット

過度なダイエットの結果、「月経が止まった」という人も少なくなかった。35歳女性は「健康リスクは知っているが、美しく痩せすぎないように痩せたい」と複雑な心情を吐露し、社会の美意識と健康の狭間で悩む女性の実情が窺える。

室伏氏は最後に、「好きなことをやって、明るく元気に生きていきたいですよね。そのためにはどうすべきか、ぜひ、一緒に見いだしていきましょう」とメッセージを送る。痩せ願望から解放され、真の健康と幸福を追求する社会への変革を呼びかけている。

室伏由佳氏がゲスト出演した「新聞記者ラジオ」は、東京新聞の有志が配信する音声番組。前編が公開中で、中編を4月7日、後編を4月14日のいずれも午後5時に公開予定。アップル「ポッドキャスト」や「スポティファイ」などで聴取可能だ。