愛犬がアルコール依存症克服の道を開く、福岡で広がるセラピー犬の癒やし
人と動物の健康、環境保全を一体的に考える「ワンヘルス」の理念を推進する福岡県ワンヘルス推進基本条例が制定から5年を迎えた。この理念を実践する一般社団法人・福岡アニマルセラピー協会は、犬との触れ合いを通じて心身を癒やすセラピードッグの派遣活動を展開し、動物愛護と共生社会への理解を深めている。同協会の木戸敏徳理事長(45歳)に、団体設立の背景や具体的な活動内容について詳しく聞いた。
アルコール依存症からの再生、愛犬リキとの出会い
木戸理事長が活動を始めたきっかけは、自身のアルコール依存症の克服体験にある。20代で依存症を患い、精神科への受診を繰り返し、入院中も試験外泊の度に飲酒を繰り返す状態が続いた。社会復帰の転機となったのは、雄のホワイトシェパード・リキとの出会いだ。福岡県糸島市内のブリーダーの犬舎でリキを見た瞬間、心強いパートナーになると直感し、飼い始めた。愛犬との時間に癒やされるうちに、お酒を必要としなくなり、働けるようになったという。
その後、犬に関わる仕事を志し、ドッグホテルを開業。一時預かりや散歩の依頼を受け付ける中で、犬への深い愛情が飼い主らの口コミで広がり、福岡県大牟田市の小児科から「アニマルセラピー」として初めて派遣の依頼を受けた。これが協会活動の始まりとなった。
セラピー犬の派遣と専門性の向上
福岡アニマルセラピー協会は2022年3月に設立され、現在はリキの子孫を含む5匹のセラピー犬を飼育している。主に県内の病院や福祉施設に月2、3回程度出向き、愛くるしい姿やしぐさで心身の安らぎを提供している。また、年間約20回のイベント参加を通じて、活動の認知度向上にも努めている。
専門性の習得については、特定非営利活動(NPO)法人・日本アニマルセラピー協会(神奈川県)に赴き、犬との信頼関係構築方法や訪問時の注意点について助言を受けた。独学で知識を深め、アニマルセラピストとして認定され、現在はセラピードッグの適性判断を行う上級トレーナーも務める。派遣する犬は、人との触れ合いを楽しみ、他の犬とも友好的であることを厳選している。
活動の成果と今後の展望
木戸理事長は、セラピー犬の効果を最も実感している一人だ。アルコール依存症で生きる気力さえ失っていた過去を乗り越え、現在は充実した活動を続けている。また、定期的に訪問する小児科医院からは、「不登校の子どもが通学を再開できた」との報告も受け、社会的なインパクトを確認している。
動物との関わりで大切にしているのは、個性を尊重する姿勢だ。例えば、犬が吠える行為も一つの感情表現として受け止め、まずは叱らないことを基本としている。協会では、大型犬を中心に有料のしつけトレーニングも提供し、県内外から利用者を迎えている。飼い主には、犬の振る舞いを寛容に受け止める重要性を伝えている。
今後の目標として、動物の癒やし効果についての理解を広め、賛同者を増やすことを掲げる。現在は有料でセラピー犬を派遣しているが、寄付を集めることができれば、ボランティア活動として展開したいと考えている。地道な継続が重要だと強調する。
木戸敏徳理事長のプロフィール:福岡市出身。NPO法人・日本アニマルセラピー協会でも理事を務める。妻とはドッグランで出会い、2人の息子を育てている。セラピー犬の派遣依頼や寄付に関する問い合わせは、福岡アニマルセラピー協会(080-6414-3278)まで。



