クマの体毛からストレスと食性の履歴を解読 福島大が新たな野生動物管理手法を開発
福島大学食農学類の望月翔太教授は、クマの体毛を分析することで、時間軸に沿ってストレスレベルや食べたもの(食性履歴)を特定できる画期的な研究結果を明らかにしました。この成果は、適切な野生動物管理の新たな評価指標として活用が期待されています。
宇宙技術を応用したストレス分析手法
望月教授は、福島市で開催された鳥獣被害対策講座において詳細な報告を行いました。研究では昨年以降、複数の野生のツキノワグマを対象に調査を実施。体毛を細かく切断し、成分を精密に分析する手法を採用しました。
ストレスに関する調査では、宇宙滞在中の宇宙飛行士から採取した毛髪の成分分析に用いられるイメージング質量分析技術をクマに応用。電車事故に巻き込まれたクマの体毛を分析した結果、一定期間にわたり慢性的な生理的負荷が蓄積していることが判明しました。
望月教授はこの発見について、「山に餌が不足するなどの環境ストレスを受けて人里に降りてきたクマが、人間に対する恐怖心などによってうつ状態に陥り、異常行動を引き起こした可能性がある」との仮説を提示しています。
GPS調査と食性履歴の分析結果
さらに、個体に衛星利用測位システム(GPS)を装着して行動を追跡した調査では、行動範囲が広いクマほどストレスを受けている傾向が示されました。望月教授は「餌の確保が困難で、広範囲を移動せざるを得ない状況がストレス要因となっているのかもしれない」と分析しています。
食性履歴に関しては、体毛に含まれる窒素と炭素の比率を測定することで、野生植物と農作物のどちらを主に摂取していたかを調査。調査対象となった約10個体のクマは、ほとんどが山の野生植物を食べており、農作物はほとんど検出されませんでした。
今後の研究方針と実用化への展望
今後は、福島市で実施されているクマのGPS行動調査データと、今回のストレス分析結果を組み合わせる計画です。これにより、異常行動が多いクマの特徴や生息地域を詳細に把握し、危害を与える可能性の高い個体を特定する手法の開発を目指します。
望月教授は「調査結果を基に、危害を及ぼすクマの特徴を科学的に把握し、効果的な対策につなげていきたい」と語り、研究成果が地域の安全確保と野生動物保護の両立に貢献することを期待しています。



