ハンセン病元患者の家族の苦悩に迫る特別展が東村山で開催
国立ハンセン病資料館(東村山市)では現在、国の隔離政策によって長年にわたり偏見や差別にさらされてきたハンセン病の元患者の家族に焦点を当てた特別展「ハンセン病問題と家族」が開催されています。この展示は、家族らが直面した社会的な孤立や心理的な苦痛を浮き彫りにし、歴史的な問題を現代に伝える重要な機会となっています。
家族訴訟の原告らの生の声を紹介
元患者の家族たちは、2016年に国に損害賠償を求める「ハンセン病家族訴訟」を熊本地裁で起こしました。同地裁は2019年、国の責任を認め、家族らに賠償を命じる判決を下しました。特別展では、この国賠訴訟の原告561人のうち、実名を公表して裁判に臨んだ4人の証言をパネルや映像にまとめて詳細に紹介しています。
原告団長を務めた林力さん(昨年11月に101歳で死去)の証言は、2024年12月に収録されたものです。林さんは、父が療養所に入った後、「くされの子」とののしられて友達が離れていったり、「父ちゃんは死んだ」とうそをつくようになったりした経験を語りました。教員として部落差別の問題に関わったことをきっかけに父との関係を見直したといい、「本当は恥ずかしいことでないことを、恥ずかしいと認めてしまったら、それは本当の恥じゃないか」という深い言葉を残しています。
家族関係の断絶と心理的影響
展示では、両親が患者だった女性の証言も紹介されています。彼女は、母が隔離されて幼少期を一緒に暮らせず、うまく関係性を築けなかったと述べています。「母との間には壁ができて、生涯解けることはなかった」と証言し、別の男性は「親に対する嫌な思いを引きずって生きている気がする」と吐露しています。これらの言葉は、隔離政策が家族の絆に与えた深刻な影響を如実に物語っています。
社会の理解不足と偏見の残存
2019年には、家族らに最大180万円を支給する「家族補償法」が成立しましたが、申請者は3分の1程度にとどまっています。担当した木村哲也学芸員は、「家族への社会の理解はまだ進んでおらず、偏見は残っている」と指摘し、法律の存在だけでは問題の根本的な解決には至らない現状を強調しています。
特別展は3月29日まで開催されており、毎週月曜日は休館です。初公開された4人の証言映像は、同館のユーチューブチャンネルでも視聴できるため、より多くの人々がこの問題に触れる機会が提供されています。この展示を通じて、ハンセン病問題の歴史的教訓を再認識し、差別のない社会の実現に向けた一歩となることが期待されます。



