九州有数の活火山・雲仙岳を望む長崎県雲仙市。温泉地として知られるこの地が今、美食の街として注目を集めている。2024年には食文化と地域の魅力が融合した「美食都市」に選ばれた。その決め手の一つが、ここで採れる野菜だという。実際に足を運んで、その魅力を確かめてみた。
火山が育む豊かな野菜
野菜直売所「タネト」に足を踏み入れると、店内の棚には旬の野菜がずらりと並んでいる。「とっちゃ菜」など珍しい品種も多く、どれもみずみずしく、新鮮さが一目でわかる。この直売所には雲仙の野菜が集まると聞き、まず訪れた。タマネギを納品していた農家の池田兼三さん(76)は誇らしげに語る。「種類が豊富でしょ。火山のおかげよ」。
雲仙は野菜の産地でもある。噴火を繰り返してできた土壌は、鉄分が豊富で水はけが良いなど、地域ごとに異なる特性を持つ。この特性を生かし、ジャガイモ、ネギ、ブロッコリーなど多彩な野菜が生産されている。山々の麓には農地が広がり、火山の恵みを存分に活用している。
在来種の復活と移住者の増加
伝統野菜など在来種の栽培も盛んだ。きっかけは20年以上前の「雲仙こぶ高菜」の再生だった。戦後まもなく開発・栽培され、漬物に使われていたが、高収量の品種に押されて生産が減少し、絶滅したと思われていた。ところが2002年、市内の農地で自生しているのが見つかり、農家有志が復活させた。
この成功が他の在来種栽培への注目を集め、若手農家や料理人らが移住してくるようになった。雲仙は食を守り、育てる街へと変貌を遂げた。これが2年前の「美食都市」認定につながった。
移住者が語る雲仙の魅力
タネト店主の奥津爾さん(51)も、2013年に東京から雲仙に引っ越した一人だ。在来種を全国に紹介する活動をしていたが、販路が限られ、一般には入手しにくいことが気になっていた。買いやすくしようと、2019年に店を構えた。奥津さんは魅力をこう語る。「在来種は味が濃かったり、香りが強かったりそれぞれ。雲仙の風土が詰まっています」。
雲仙市は火山の恵みを生かした食文化で、さらなる発展が期待される。温泉とともに、美食を求めて訪れる観光客も増えそうだ。



