中央大学附属横浜中学校・高等学校(横浜市)は、文部科学省の「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」に今年度も採択され、活動2年目を迎えた。今春には、高性能パソコンや3Dプリンター、ドローンなどを備えた「情報室」が整い、ICTを活用した斬新な授業を通じて生徒たちの新たな可能性を広げている。この情報室を訪れ、同校のICT教育の展望について取材した。
ドローンやVRゴーグルも備えた情報室
4月30日の放課後、情報室ではグループワークしやすい配置の机で、生徒会「技術班」の中学生3年生たちが数学科教員とプログラミングの勉強会を開いていた。技術班は文化祭で人気の出し物について、希望者を抽選しチケットをメールで自動配信するプログラムなどを制作してきた。室内には高性能パソコン5台、3Dプリンター2台、ドローン2機、VRゴーグル1台など最新鋭の情報機器が並ぶ。情報室はミシン用電源が多数あった被服室を転用し、床下配線のOAフロアに改修された。昨年度のDXハイスクール採択後、機器選定や教員研修を経て1月から3月にかけて整備された。
技術班の生徒の一人は「より高性能なパソコンが入ったおかげで、さらにいろいろな試みができそうです」と喜びを語る。柴田峰行教頭は「プログラミングやデータサイエンス、AI活用などのデジタルリテラシーを向上させつつ、文理横断的な探究学習を深め、実社会で幅広い分野に対応できる人材を育てたい」と述べた。情報室前には休み時間などに使える開放的な空間があり、情報室と合わせてプレゼンテーションの実施も検討されている。
意欲を高めた生徒が学外コンテストでも活躍
今年度は情報室を活用し、高校3年生の選択授業「情報2」などが行われている。情報科の吉田星太教諭は「生徒が個別にテーマを決め探究活動を行っています。本校では1人1台タブレットを持っていますが、AIでのプログラミングにはスペックが不十分でした。DXハイスクール採択後の機器選定には生徒の希望を反映させています」と説明する。情報2の授業を受けている生徒の一人は、学外団体に参加し、街中のごみのポイ捨て監視用にセンサーや監視カメラを埋め込んだハトの人形を3Dプリンターで製作した経験があり、「これからは校内で製作が可能になる」と意気込む。
1月から2月にかけて、高校3年生向けに二つの特別講座も開かれた。「生成AIを活用したバイブコーディング」ではAIと対話しながらプログラミングを行い、「デジタルファブリケーション演習」では自分のアイデアを基に3Dプリンターでものづくりを試みた。授業以外では、学校のPR映像を360度動画で制作し、VRゴーグルを使って学校説明会や文化祭で来校者に体験してもらう活用も検討されている。
吉田教諭は「生徒会や科学部の生徒から『情報室を使わせてほしい』という声が上がり、どんどん活用してもらっています。昨年度は教員向け研修も実施しましたが、指導する前に生徒自身が機器を使いこなし、新しい可能性を探っています」と話す。生徒の意欲は学外活動にも広がり、系列の中央大学などが実施するプログラミングコンテストに高校生が参加したほか、関西大学、中央大学、法政大学が共催する「データサイエンス・アイデアコンテスト2025」に高校2年生が参加し、必修授業「情報1」で取り組んだ社会課題解決の探究が選考に残りポスター発表を行った。
ICT教育の推進で生徒の発信機会を拡大
情報教育以外での機器活用も検討されており、国語科で広報部長の内田大貴教諭は昨年度、AIを活用した新しい授業を試みた。AIに小説を読ませて戯曲に変換させ、生徒が演じて発表し、その様子を撮影した動画を校内用YouTubeにアップする内容だ。内田教諭は「小説をより深く理解するための活動であり、生徒のアウトプットの機会にもなりました。今年度は情報室とその前のスペースを活用することで、より実施しやすくなると考えています」と話す。また、生徒が書いたメッセージを基にAIが作画し絵手紙を作る授業も行っており、「絵が苦手な生徒にも自由な創作の場が開けます。新しい技術を活用することで生徒の発信機会が広がっています」と述べる。
柴田教頭は「DXハイスクールとしてのICT教育推進は、情報分野を志す生徒だけでなく、全生徒にこれからの社会で必要とされる新しい技術に触れる機会を提供しています。手で文字を書く従来の学びを大切にしながら、最新機器に触れることで興味ある分野を追求できると気付いてほしい。基礎的なプログラミングで論理的思考力も身につきます。情報室が開かれた場となり、生徒が新しい可能性を発揮することを期待しています」と語った。



