東海第二原発の広域避難計画、茨城県内で7万2000人分の避難先が未確保
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故は、日本の原子力政策に大きな転換を迫った。茨城県東海村にある東海第二原発も、現在も停止状態が続いており、運営する日本原子力発電が再稼働を目指すものの、その実現は不透明な状況にある。
周辺自治体に義務付けられている広域避難計画については、対象となる14市町村のうち、9市町村が策定を完了した。しかし、現時点で約7万2000人分の避難先が確保できておらず、茨城県は策定中の自治体への支援に力を入れている。
再稼働を巡る訴訟と避難計画の重要性
東海第二原発の再稼働を巡っては、県内外の住民らが運転差し止め訴訟を提起している。水戸地方裁判所は2021年3月、「実現可能な避難計画が整えられているというにはほど遠い」として、再稼働の差し止めを命じた。この訴訟は現在も東京高等裁判所で継続中である。
茨城県の大井川知事は、「再稼働については、安全性の検証と、実効性ある避難計画の策定に取り組み、県民、市町村、県議会の意見を伺いながら判断していく」との姿勢を示している。
原子力災害が発生した場合、放射性物質の放出が予想される際には、原発から約5キロ圏内の「PAZ」(予防的防護措置準備区域)では、放出前の段階から予防的な避難が行われる。約5~30キロ圏内の「UPZ」(緊急時防護措置準備区域)では屋内退避が原則となるが、1時間あたりの空間放射線量率が20マイクロ・シーベルトを超えた場合は、一時的な移転が求められる。こうした避難時の行動指針となるのが、広域避難計画である。
新型コロナ禍による避難計画の見直し
広域避難計画は、国の防災基本計画などに基づき、東海第二原発から約30キロ圏内の14市町村に策定が義務付けられている。茨城県内の避難対象人口は、全国の原子力発電所で最多となる約92万人に上る。
県内の避難対象者全員分の避難先は、一時的に確保された。しかし、新型コロナウイルス感染症の教訓や、プライバシー確保の問題を受け、茨城県は避難所で確保する1人あたりの面積を「2平方メートル」から「3平方メートル以上」に変更した。この変更により、新たに22万5000人分の避難先が必要となった。
各市町村は、地域コミュニティーの維持も考慮しながら、県内や周辺5県の自治体と協定を結び、避難先の確保に努めてきた。このうち9市町が協定を結んだ県外自治体は、福島県37市町村、栃木県23市町村、千葉県22市町村、埼玉県11市町村、群馬県8市町村の合計101市町村に及んでいる。
千葉県との調整が継続中
高萩市が昨年12月に計画策定を終え、現在は水戸市、ひたちなか市、那珂市、茨城町、城里町の5市町が策定中である。新たな避難先確保に向けて、茨城県は県有施設や県内市町村の公的施設を受け入れ先に追加し、県内外の国立大学や民間企業などにも協力を要請してきた。
その結果、2025年10月時点で不足人数は7万2000人にまで減少した。県が現在、調整に力を入れているのは千葉県内の自治体である。ひたちなか市が協定を結ぶ10市町と追加の受け入れについて検討を続けるほか、千葉市など協定未締結の自治体の避難所状況を把握する調査を実施している。
茨城県原子力安全対策課は、「計画策定の支援を進め、県民が安全に避難できるよう実効性のある態勢をつくっていきたい」と述べている。
安全対策工事の完了は「厳しい状況」
2011年の東日本大震災では、東海村は震度6弱の本震に見舞われ、東海第二原発は原子炉が自動停止した。地震の影響で、外部からの電源も失われた。
原発には最大約5.4メートルの津波が襲来し、原子炉冷却に必要な非常用ディーゼル発電機を冷やす海水ポンプ3台のうち1台が水没した。しかし、残りの2台で問題なく対応できたという。3月13日に外部電源が復旧し、15日午前0時40分に原子炉を冷温停止させた。
日本原子力発電は安全対策工事を進めているが、防潮堤の基礎部分で施工不良が判明するなど、工事の完了は延期が続いている。2024年には完了目標を2026年12月としたが、日本原電の村松衛社長は今年1月、「非常に厳しい状況」と明かしている。



