睡眠の質を低下させる6つのNG習慣とは?専門医が解説する快眠への道
春は寒暖差が大きく、就職や人事異動などによる環境変化で心身にストレスがかかりやすい季節です。夜にぐっすり眠れているでしょうか。睡眠は日中の活動を支える土台と言われていますが、寝る前にスマートフォンやタブレットを見てしまい、寝つきが悪くなる人は少なくありません。睡眠専門医の白濱龍太郎さんに、眠りのメカニズムや、心地良い眠りを得るために気をつけたいポイントについて詳しく伺いました。
睡眠は心身回復の土台…しかしやりがちなNG行為
白濱さんは、医療法人「RESM(リズム)」グループの理事長を務めています。東京医科歯科大学(現・東京科学大)などでの臨床経験を生かし、睡眠障害などの診療に当たる睡眠センターを各地の総合病院に設立してきました。また、睡眠・呼吸器科の専門クリニック「リズム新横浜」や「リズム新東京」を運営しています。
「睡眠は単なる休息ではなく、体のメンテナンスや心身の回復を支える土台となるものです。最高のパフォーマンスを発揮するためにも、睡眠の質を下げてしまう生活習慣はぜひ見直してほしいです」と白濱さんは強調します。
大正製薬が2026年3月に実施した調査では、20~60代の男女1000人を対象に「やりがちな睡眠の質を下げる習慣」を尋ねました。その結果、以下のような回答が上位に挙がりました。
- スマートフォンを見ながら寝る(328人)
- 寝る直前までパソコン・タブレットで作業や視聴をする(292人)
- 寝る直前までテレビを見る(251人)
- 布団に入ってから考えごと・反省などをする(161人)
- 就寝6時間前以降にカフェイン(コーヒー・緑茶・エナジードリンクなど)をとる(132人)
スマホ使用の弊害と対策
白濱さんは、「睡眠が大切だとわかっていても、寝床にスマホやタブレットを持ち込んでしまう人は少なくありません。寝る前にスマホを使用すると、ブルーライトによって眠りに誘うホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、脳を興奮状態(交感神経優位)にしてしまいます。その弊害を避けるためには、ちょっとした工夫が必要です」と指摘します。
具体的な対策として、以下の方法を提案しています。
- スマホの充電器をベッドから離れた場所に置く。
- 充電器のコードを短くして、わざわざベッドから立ち上がらないと手が届かないようにする。
- 緊急連絡が心配な場合は、着信音をオンにした状態で、少し離れた場所に置く。
まずは、スマホに振り回される生活に区切りをつけることから始めると良いそうです。
その他のNG習慣と改善策
睡眠の質を下げてしまうNG習慣として、白濱さんは以下の五つを挙げています。
- 寝る前の「熱い風呂」:良質な睡眠には体内の深部体温が下がることが必要ですが、熱い風呂は逆に深部体温を上げてしまいます。入浴は、就寝の1時間半から2時間前にぬるめのお湯で行いましょう。
- 夕食や晩酌での「カフェイン・アルコール」摂取:コーヒー、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには覚醒作用があり、夜中に何度も目を覚ましてしまう「中途覚醒」を引き起こします。寝酒も睡眠を浅くするので、中途覚醒の原因になります。寝る前は、麦茶やハーブティーなどカフェインレスの飲み物を選びましょう。
- 就寝直前の「激しい運動」:寝る前にウェートトレーニングなどの激しい運動を行うと、交感神経が優位になり、心拍数が上がって脳を興奮状態にします。寝る前にはストレッチやヨガなどの軽い運動がおすすめです。
- 寝床に入ってからの「考えごと」:「明日の仕事の準備」や「悩みの解決策」などを考え始めると、脳が「寝床=起きている場所」と学習してしまいます。考えごとをして20~30分たっても眠気が強まらない場合は、いったん起きて、照明を落とした静かな環境でリラックスしてから再び寝床へ戻りましょう。
- 休みの日の「朝寝坊や寝だめ」:寝る時間・起きる時間が日によって大きく変わると、体内時計が乱れやすくなります。平日と休日の就寝時間・起床時間の差を小さくすることが、結果として眠りの安定につながります。
睡眠ホルモンのメカニズムと食生活の重要性
「睡眠は、夜に眠気を促すメラトニンと、朝の覚醒を支えるコルチゾールという二つのホルモンの分泌が時間帯に応じてきちんと切り替わることで、はじめて深い睡眠が得られます。ところが、就寝時間のばらつきや、夜間の光刺激、生活リズムの乱れが続くと、この切り替えがうまくいかなくなるのです」と白濱さんは説明します。
さらに、「食生活の改善にも関心を持ってほしい」と白濱さんは言います。魚介類の多くには、睡眠ホルモンの材料となるトリプトファンや、ストレスなどで高ぶった神経を穏やかにするタウリンなどの栄養素が豊富に含まれています。
「現代人の食生活は超加工食品(加工の程度が高く、多くの添加物を含む食品)に頼りがちですが、魚介類を積極的に摂取することで、血流や自律神経のバランスを整えやすくなります」と強調しています。
睡眠時無呼吸症候群のリスクと対策
もし、「しっかり眠っているはずなのに熟睡感がない」「日中の体調不良が続いている」と感じていたら、激しい寒暖差や新生活のストレスによる「春バテ」ではないかもしれません。睡眠中にいびきをかいているのであれば、無呼吸や低呼吸を引き起こす「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が隠れている可能性があります。
「睡眠時無呼吸症候群を放置していると、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まると言われています。中高年男性に多いイメージで受け止められがちですが、アジア人は骨格的に無呼吸になりやすく、女性も閉経後になりやすいのです。家族に大きないびきを指摘されたら、検査・受診を検討しましょう」と白濱さんはアドバイスします。
毎日の睡眠の質を少しでも良くしたいと思うなら、日常生活の身近なところから見直していく必要がありそうです。



