原子力事故への備えというと、避難計画や防災対策の話が中心になりがちです。しかし、放射線を受けた人々をどのように診断し治療するのかという医療体制については、一般にあまり知られていません。今回は、緊急被ばく医療の体制が全国でどのように整備されているのか、その詳細を探っていきます。
全国に広がる原子力災害拠点病院
原子力規制委員会の公表資料によると、2025年4月1日現在、原子力災害時の医療対応を担う原子力災害拠点病院は全国で51施設あります。これらの病院は、原子力発電所が立地する地域を中心に指定されており、被ばくや汚染を伴う傷病者への初期対応を担う重要な役割を果たしています。原発事故が発生した際には、迅速な医療提供が求められるため、こうした拠点の存在は不可欠です。
重い被ばくに対応する3次医療機関
この拠点病院の中でも、特に重篤な被ばく事例に対応する役割を持つ病院は限られています。現在、3次被ばく医療機関として位置付けられているのは、全国でわずか5施設です。具体的には、弘前大学医学部付属病院、量子科学技術研究開発機構・放射線医学総合研究所病院(千葉市)、広島大学病院、長崎大学病院、そして福島医科大学病院が該当します。
いずれの機関も、放射線医学における高度な専門性を有しており、被ばく線量の正確な評価や複雑な治療、さらには他の医療機関への技術的助言を行う重要な任務を担っています。これらの施設は、単に治療を提供するだけでなく、全国的な医療ネットワークの中核として機能しています。
ブロック制による全国体制の構築
こうした3次被ばく医療機関は、それぞれが孤立して動くのではありません。全国の緊急被ばく医療体制は、地域ごとに役割を分担する「ブロック制」によって支えられています。限られた専門拠点が広範囲の地域を担当し、事故が発生した際には県境を越えて迅速な支援を行う仕組みが整備されているのです。
この体制により、大規模な原子力災害時でも、効率的な医療資源の配分と専門的な対応が可能となります。次回の記事では、この全国的な枠組みの中で、福島県の緊急被ばく医療がどのように位置づけられ、機能しているのかについて、さらに詳しく掘り下げていく予定です。



