埼玉の小児医療センターで抗がん剤誤投与か ビンクリスチン検出で1人死亡2人重体
埼玉県立小児医療センター(さいたま市中央区)は3月11日、白血病治療のために抗がん剤を注射した患者3人のうち、10代の男性1人が死亡し、10歳未満と10代の男性2人が意識不明の重体となっていると発表しました。この深刻な事態を受け、同センターは外部調査委員会を設置し、原因究明に乗り出しています。
患者の髄液から本来使われるはずのない薬液が検出
3人の患者はそれぞれ昨年1月、3月、10月に急性リンパ性白血病の治療として、髄液に抗がん剤を直接投与する髄腔内注射を受けました。しかし、注射後1日から4日以内に重篤な神経症状が現れ、緊急事態に陥りました。
死亡した10代男性は昨年10月22日の注射後、手足にまひが生じ、症状が全身に広がって人工呼吸器を必要とする状態に。その後、容態が回復することなく、今年2月6日に亡くなりました。他の2人の患者も現在、人工呼吸器による治療が続けられており、意識不明の重体が続いています。
同センターは昨年11月以降、抗がん剤の髄腔内注射を全面中止し、外部の有識者を含む調査委員会を設置。患者の髄液を分析機関に検査依頼したところ、今年2月に驚くべき結果が明らかになりました。髄腔内注射では通常使用されない別の抗がん剤「ビンクリスチン」が検出されたのです。
ビンクリスチンは神経障害を引き起こしやすい薬剤として知られており、専門家によれば、3人の患者に現れた重篤な神経症状の原因となった可能性が極めて高いと指摘されています。
調剤室のセキュリティは厳重 外部からの侵入困難
埼玉県庁で行われた記者会見で、センター幹部は注射までの手順について詳細を説明しました。注射用の薬液はまず調剤室で薬剤師が調合し、その後処置室に運ばれて医師と看護師が注射を行うという流れです。
興味深いことに、ビンクリスチンは同院内に存在する薬剤ではあるものの、問題となった3人の患者の調剤記録には使用された形跡が一切ありませんでした。さらに、調剤室はセキュリティが厳重に管理されており、外部からの不正な侵入は困難な状況にあるとされています。
センター関係者は「投与までの手順は普段通りだった」と述べており、通常の医療プロセスの中で何らかの誤りが生じた可能性が浮上しています。事件と事故の両面を考慮し、同センターは既に県警大宮署に届け出を済ませています。
岡明病院長「公的な調査に協力し原因究明を」
岡明病院長は記者会見で、「検出されるべきではない薬液が検出され、非常に深刻に受け止めている。公的な調査等に協力しながら、原因究明をしていきたい」と述べ、問題の重大性を認めるとともに、透明性のある調査への協力を約束しました。
埼玉県立小児医療センターは、一般の病院では対応が難しい小児疾患を専門に扱う医療機関として知られています。独立行政法人の埼玉県立病院機構が運営しており、国の「小児がん拠点病院」にも指定されるなど、地域医療の中核を担う施設です。
今回の事態は、高度な医療を提供する施設であっても、薬剤管理や投与プロセスにおける人的ミスやシステムの不備が重大な結果を招く可能性があることを浮き彫りにしました。医療安全に対する再点検が急務となる中、今後の調査結果が注目されます。



