10代・20代の妊娠SOSに寄り添う佐藤初美さん、歌舞伎町で夜間パトロールを継続
2月6日午後9時過ぎ、東京・歌舞伎町の賑わう街角で、認定NPO法人「10代・20代の妊娠SOS新宿―キッズ&ファミリー」理事長の佐藤初美さん(73)が、若い女性たちに温かい声を掛けながら歩いていた。毎週金曜日と土曜日、1時間ほどの夜間パトロールを実施し、路上に立つ女性たちに「寒いから暖かくしてね。話したいことがあればいつでも聞くからね」と語りかけている。
カイロとメッセージで孤独な若者に寄り添う
佐藤さんは、一人一人に「ひとりで悩まないで、ご連絡ください!」というメッセージと電話番号が記されたカイロを手渡す。受け取る女性たちの反応は様々で、いぶかしげな表情を見せる者もいれば、「ありがとう。帰るところもお金もない」と打ち明ける者、また「さとばあ!」と嬉しそうに近づいてくる者もいる。この日、約100個のカイロを配布した。
佐藤さんは、「新型コロナウイルス禍の後、路上に立つ女性の数が増え、中高生の姿も目立つようになった」と指摘する。家庭内虐待や性暴力により、行き場やお金を失った若年女性、妊娠や性病に悩む女性は少なくない。外見は明るく強がっていても、内面は孤独で自己肯定感が低いケースが多いという。
「心配だなと感じた子には、『あなたは一人じゃない』と伝えている。指導するような言い方はせず、そばにいるという姿勢を示すことを心掛けている」と佐藤さんは語る。
34年の保育士経験からNPO設立へ
佐藤さんは1975年から2009年まで、東京都新宿区で34年間保育士として働いた。虐待を受ける子どもと関わる中で、その親自身も過去に虐待経験があるケースが多いことに危機感を抱き、早期支援の重要性を痛感した。都内の保育士らと研究会を立ち上げ、対応策を学んだ後、2015年に区を退職し、翌年NPOを設立した。
「行政の枠や勤務時間にしばられることなく、いつでも子どもたちのSOSに応じられる体制を整えたかった」という思いから、団体名に「妊娠」を入れた。これは、一人では解決が難しい問題でありながら、親への相談や産婦人科受診のハードルが高いためだ。「誰にも相談できないまま出産し、虐待が繰り返されるような事態は避けたいと思った」と佐藤さんは強調する。
24時間相談体制と啓発活動の拡大
精神保健福祉士や看護師などの資格を持つ14人の仲間とともに、佐藤さんは夜間パトロールに加え、メールや電話による24時間対応の相談活動を続けている。これまでに対応した相談者は約2300人に上る。
深刻な相談は、夜中から朝方にかけて多く寄せられ、「妊娠したけれど、誰にも相談できない」「レイプされた」といった切実な声や、「死にたい」と訴える女性もいる。状況に応じて、病院受診や母子手帳・生活保護の申請同行、シェルター提供など、多角的な支援を行っている。
NPO設立から10年が経過するが、夜の歌舞伎町に立つ若い女性たちの悩みは改善せず、むしろ低年齢化の傾向が懸念される。近年は、性や妊娠に関する知識を身につける啓発活動にも力を入れている。
「『助けて』の声を聞き漏らさず、どんな話でも、否定、拒否せずにとことん寄り添う。若年女性の命と居場所を守るのが使命だと思っている」と佐藤さんは語る。
性教育の不足と予期しない妊娠の実態
性教育の普及に取り組む一般社団法人「ソウレッジ」が2024年11月に実施した調査によると、全国10~29歳の男女800人中74人(9.25%)が予期しない妊娠を経験しており、その約6割は18歳以下だった。義務教育の中学校までに避妊方法を学んだ人は約3割、高校まででも約4割に留まり、性教育の機会不足が明らかになった。
3月8日の国際女性デーを前に、ジェンダー格差や貧困・暴力の問題解決に取り組む人々の活動が注目されている。佐藤さんは、若年女性の命と居場所を守るため、今後も夜間パトロールと相談支援を継続していく方針だ。
