民生委員としての最後のお弁当配布、Sさんとの心温まる別れ
長年にわたり民生委員として活動してきたが、この春、その役割を辞めることになった。その中で、特に強く印象に残っている出来事がある。委員会活動の一環として、2カ月に一度実施される「ふれあいお弁当配布」だ。これは地域の独居高齢者宅に昼食用のお弁当を届ける取り組みで、福祉ボランティアの方々が丹精込めて作られたお弁当を、私が配達する役割を担っていた。
Sさんとの出会いと優しい交流
対象者の一人に、Sさんという方がいた。品のある柔らかい物腰で、いつも丁寧にお礼を伝えてくださり、「ご仏前に供えてから頂くのよ、おいしいお弁当をありがとう」と声をかけてくれた。この活動は、お弁当を作る苦労をせずに、喜んでもらえる喜びだけを味わえる良いとこ取りの役割だったが、Sさんのような方々の笑顔に触れることが、私の大きな励みとなっていた。
衰えが顕著になり始めたSさんの変化
しかし、Sさんが90歳を過ぎて数年が経った頃から、悲しいことに衰えが目立つようになってきた。ある日、お弁当を受け取った際、何だか嚙み合わない挨拶をされた。その時は少し戸惑いを感じたが、車に戻り運転席から前を見ると、Sさんが門扉の前まで歩き出し、わざわざ歩道に出て見送りの手を振ってくださっていた。これは初めてのことで、驚きと共に、すぐに悟った。Sさんにお会いするのはこれが最後になるのだな、と。
最後の別れと心に残る美しい姿
その後、程なくしてSさんは介護施設に入居され、先日、亡くなられたことを知った。さようなら、Sさん。あなたのように、私も背筋を伸ばし凜とした生涯を全うできるだろうか。あの日の美しい立ち姿が、今も心に焼きついて離れない。藤井春代(76)は、山口県下松市でこの経験を振り返り、福祉活動の大切さと人間関係の尊さを改めて感じている。



