ヤングケアラーの困難に光を 広島県三原市が支援アプローチを強化
ヤングケアラー支援 三原市が当事者へのアプローチ強化

ヤングケアラーの困難に光を当てる 広島県三原市の支援アプローチ

家事や介護を日常的に担う若年層「ヤングケアラー」への理解と支援を広げようと、広島県三原市が当事者や地域住民への積極的なアプローチを進めている。この取り組みは、子どもが子どもとして過ごせる環境づくりを目指す重要な一歩となっている。

元当事者からのメッセージ 楊慧敏さんの経験と提言

2026年2月、三原市で市民向け講演会が開催され、元ヤングケアラーで現在は県立広島大学保健福祉学部で支援体制を研究する助教の楊慧敏さん(35)が講師を務めた。楊さんは中国・四川省出身で、小学1年生の時に同居する祖父が病気で半身不随となり、介護が必要になった。自営業の両親が忙しかったため、楊さんは祖父の見守りや家族の食事作りを担うことになった。

「嫌だけど、私が頑張らないと家族が困る、と使命感を持っていた」と楊さんは当時を振り返る。祖父は彼女が中学時代に亡くなり、その経験が高齢者福祉への関心を深め、日本留学につながった。同志社大学大学院で8年間研究を続ける中で、自身もヤングケアラーだったことに気づいたという。

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講演では、手伝いとケアの違いについて詳しく説明した。ケアの特徴として、子どもが自由に過ごせる時間がなく負担が重いことケアがなければ家族の生活が維持できず拒否権がないこと保護者の見守りがないことなどを挙げた。しかし、家庭状況や年齢によってケースが異なるため、定義の難しさも指摘している。

ヤングケアラーが直面する具体的な困難

楊さんは、支援が必要な理由として以下の点を強調した。

  • 宿題や勉強、友人との遊び、クラブ活動など、子どもとしての自由時間が取れない
  • 勉強とケアの両立が難しく、精神的に大きな負担がかかる
  • 授業中に寝たり宿題の提出が遅れたりして怒られ、自己否定につながりやすい
  • 「自分が世話をしないと家族が困る」と抱え込み、周囲に頼れない孤立感

一方で、元当事者として「祖父のお陰で今の自分がある。仕事の段取りを考えるのが得意という強みもあり、『かわいそう』と決めつけてほしくない」との思いも語った。地域住民には、信頼して話せる大人が近くにいることの重要性を訴え、SOSを出しやすい環境づくりを呼びかけた。

三原市の具体的な取り組みと成果

三原市は2022年、施策の基礎資料として市内のヤングケアラーの実態調査を実施した。その結果、「世話をしている家族がいる」と回答した中学生は6.3%、高校生は4.2%で、いずれも全国平均を上回る水準だったことが判明した。

これを受けて市は2023年度から、児童生徒向けの啓発チラシや自己チェックリストの配布、LINEによる相談窓口の設置を開始。市民向け講座も定期的に開催してきた。2026年2月の講演会後のアンケートでは、参加者から「気になる子に声をかけようと思う」「ケアをするかどうかの選択権が子どもにないことが問題だとわかった」などの前向きな意見が寄せられた。

2025年度には、楊さんが市内の学校で計24回の出前講座を実施。学校生活の中で教員らが目配りする重要性を訴え、これらの取り組みを通じて、市は3年間で11事例を把握することに成功した。具体的な支援としては、家族への訪問看護や受診同行のサポート、家事支援などにつなげている。

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今後の展望と課題

三原市子育て支援課は、「ヤングケアラーは顕在化しにくく、子ども自身や周囲の大人がどうすれば気づけるかが何より重要」と指摘する。子どもが子どもとして過ごせるよう、今後も地道な取り組みを継続していく方針だ。

楊さんは最後に、「頼れる先があると思うだけでヤングケアラーにとって救いになる。地域住民の理解とサポートが、彼ら彼女たちの未来を支える力になる」と締めくくった。三原市の取り組みは、全国の自治体にとって重要なモデルケースとなる可能性を秘めている。