自民党兵庫県連内で「斎藤票」を巡る対立が表面化
衆議院選挙兵庫2区(神戸市北区など)において、自民党県連内の深刻な不協和音が明らかになった。無所属で立候補した自民党推薦の前神戸市議が、斎藤元彦・兵庫県知事の支持層である「斎藤票」の獲得を目指したことで、党内部の亀裂が拡大したのである。
県議団と神戸市議団の足並みの乱れ
問題の核心は、斎藤知事に対するスタンスの違いにある。県議団と神戸市議団では、知事への対応方針が大きく異なり、選挙戦において効果的な連携が図れなかった。特に、内部告発問題を調査する県議会百条委員会の委員長を務めた自民党県議・奥谷謙一氏に対して、坊恭寿氏の陣営が応援を拒否したことが、両者の溝を深める結果となった。
奥谷氏は記者団に対し、「立候補できず残念だったが、地元から国会議員を出すために応援したい」と語ったものの、その後個人演説会への出席自粛を求められた。この対応について、奥谷氏は周囲に「県連推薦の候補なのに応援もさせてもらえなかった。これでは一丸となるのも無理だ」と不満を漏らしている。
「斎藤票」獲得を目指した選挙戦術
公認を得られず、党の調査で知名度不足が指摘された坊氏陣営が着目したのが、前回知事選で111万票、2区内で8万票以上を集めた「斎藤票」であった。陣営はSNSが有効だと考え、斎藤知事を支持する地域政党・躍動の会と連携。坊氏が所属県議と話し合う動画を発信するなど、積極的な情報発信を行い、「県市協調」を訴える街頭演説の様子も流して「斎藤色」を強めた。
2025年の参院選で実施された出口調査によると、投票の際に「SNS・動画投稿サイト」を参考にした人の68%が斎藤知事を「支持する」と回答しており、デジタル戦略の重要性が浮き彫りになっていた。
分裂が招いた敗北とその影響
選挙結果は、日本維新の会候補が8.2万票で当選し、坊氏は4.1万票に留まった。投票日当日の出口調査では、自民党支持層の50%が維新候補に投票したと回答し、坊氏への支持は38%にとどまっている。2区内の比例票では自民党が維新の会の倍近い6.1万票を集めており、県連幹部は「一丸となれたら、勝てたかも」と悔やみの声を上げた。
この分裂は今回が初めてではない。知事選においても、自民党の県議団と神戸市議団で対応が分かれた。不信任決議を主導した県議団が自主投票を決め、斎藤知事支援を禁止したのに対し、市議団は「自主投票なのに支援を禁じるのは問題だ」と反発。結果的に票が分散し、斎藤知事の再選を後押しする形となった。
今後の県連運営への懸念
自民党県議は「斎藤知事と全面的には対立していない」と説明し、内部告発問題での説明責任を求める一方、予算案可決など政策面では是々非々で向き合っていることを強調する。しかし、「直接向き合っていない市議団中心の陣営が勝手に斎藤色を強めるのは面白くない」と不快感を示しており、両者の溝は深いままだ。
選挙結果を受け、坊氏を応援した神戸市議は「露出増につながった」と手応えを強調する一方、県連幹部の県議は「一枚岩になれなかったことは今後の県連内に禍根を残すかもしれない」と不安を吐露。今後の県連運営において、この亀裂がどのように影響するかが注目される。
兵庫2区は長年、自民党が候補者を立てず公明党を支援してきたが、公明党が立憲民主党と中道改革連合を結成して撤退したことで、自民県連が公認候補の擁立に動いた経緯がある。今回の選挙では、連立政権を組む日本維新の会の要請を受けて党本部が公認を見送ったことも背景にあり、複雑な政治状況が党内対立に拍車をかけた形だ。