社会保障と税の一体改革において、高市首相が「改革の本丸」と位置づける給付付き税額控除の具体的な制度設計が進展している。しかし、給付額や対象者の線引きを詰めるには、財源に関する議論を同時に行うことが不可欠である。
給付付き税額控除とは何か
給付付き税額控除は、現金給付と減税を組み合わせて家計を支援する仕組みだ。政府と与野党で構成される「社会保障国民会議」は、その制度案を公表した。この制度は、税と社会保険料などを総合的に捉えた「純負担率」の考え方に基づき、勤労世代の中低所得者層を中心に負担軽減を図る。
具体的には、子育て世代への配慮や「年収の壁」による手取り減少への対応として、給付を増やすことが検討されている。おおむね妥当な方向性と言えるだろう。
公平な制度設計に向けて
税額控除を含めた公平な制度設計には、金融や不動産などの所得を正確に把握する仕組みが必要だ。その構築に時間がかかるため、まずは給付に一本化する方針も理解できる。しかし、きめ細かな支援を実現するためには、税額控除の検討も並行して続けるべきである。
社会保障費増大の現状
高齢化社会の進展に伴い、年金、医療、介護などの社会保障給付は拡大の一途をたどっている。本来ならば消費税の引き上げで財源を確保するのが筋だが、増税への抵抗感が強いため、これまでは主に給与から天引きされる社会保険料の引き上げで賄ってきた。
子供2人の共働き世帯で年収375万円の場合、税などの純負担額は米国、ドイツ、フランスと比べて年間27万円も重いという。制度に歪みが生じている現状は看過できない。
財源議論の欠如が招く問題
最大の問題は、財源に関する議論が置き去りにされていることだ。このままでは具体策についての国民的議論が深まらない。首相は、給付付き税額控除導入までの「つなぎ」として、2年間限定で食料品の消費税軽減税率を8%から0%にすると強調してきた。しかし、0%ではレジ改修に時間がかかるため、1%とする奇策も検討されている。
消費税は貴重な社会保障財源であり、物価高対策という短期的な目的に用いるべきではない。また、国民会議が給付先行で改革の制度設計を進めているにもかかわらず、政府側が消費減税を来年4月から実施する方向で検討しているのは整合性を欠く。ここでも財源の目途は立っていない。減税先行の無責任な判断は厳に慎むべきだ。
市場への影響と国民生活
財源の議論を後回しにすれば、市場の信認が揺らぎ、円安と物価高の連鎖が止まらなくなる可能性がある。それは国民のためにならないどころか、国民生活を一層苦しめる結果を招くだけだ。



