岩手県は、今年度中に設置される見通しの防災庁の地方拠点「防災局」の誘致に本格的に乗り出す方針を固めた。東日本大震災や、大船渡市と大槌町で発生した大規模な山林火災などの貴重な経験を最大限に生かす考えだ。来年度の政府予算要望書にこの方針を明記しており、達増知事は11日、関係省庁を訪問して防災局の設置について直接働きかける。
防災庁と防災局の概要
防災庁は、事前防災から災害対応、復旧・復興までを一元的に担う新たな組織であり、設置法案が今国会で成立する見通しである。同法案では、法律公布から2年以内に防災力を強化するため、地方に防災局を設置することが定められている。
政府は、首相をトップとする内閣直属の独立組織として、11月の同庁発足を目指している。防災局については、南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝地震の被害想定地域など、2か所に設置する方向で検討が進められている。
岩手県のアピールポイント
県は8日に発表した来年度の政府予算要望で、初めて防災局を誘致する考えを表明した。震災で被災しながらも、人命救助や避難所運営、復興計画の作成、被災者の生活再建・心のケアなどに取り組んできた実績から、「有力な候補地の一つ」と自負している。また、地理的に東北地方の中心に位置することから、災害発生時に初動対応しやすいことも強く訴える。
さらに、専門人材を育成する「防災大学校(仮称)」についても、県内での設置を検討するよう政府に求める方針だ。
全国的な誘致競争
防災局を巡っては、全国の自治体間で「誘致合戦」の様相を呈している。これまでに北海道や宮城県・仙台市など、約40の自治体や団体が名乗りを上げている。牧野復興相は9日の閣議後記者会見で、「どこに設置するのか、これから検討する」と述べるにとどめ、設置場所について明言を避けた。
知事の意気込み
達増知事は9日の定例記者会見で、防災局が設置された場合の波及効果について、「県民の防災意識を高め、過去の災害を風化させない効果がある。人の出入りもあり、経済振興も期待される」と述べた。また、「岩手の経験や今の状況を説明できればいいと思っている」と誘致への意気込みを語った。
政府予算への提言
来年度の政府予算編成に向けて、県が8日に発表した国などへの提言・要望では、防災局の設置のほかに、山林火災で被災した大船渡市や大槌町の復旧・復興の支援など、計124項目を掲げた。前回より2項目増加している。
復興分野では、東日本大震災の復興推進に必要な予算確保や、山林火災に見舞われた大船渡市の被害木の利用に向けた支援、大槌町の災害応急対策への財政措置など18項目をまとめた。
地方創生・人口減少対策では、東京一極集中の是正や起業・スタートアップの支援など42項目、県政課題全般では農林水産業に対する燃料・生産資材の高騰対策や、物価高騰に対応する医療機関の支援など64項目を求めた。



