「まさかこんなことに」―兵庫自民を一転させた斎藤知事の二つの発言
2026年6月8日午後3時50分、兵庫県庁の大会議室でこの日3回目となる自民党県議団の議員団総会が始まった。最大会派である自民党に属する34人の県議が集まり、議題は斎藤元彦知事が提出した給料削減案への対応だった。当初は賛成の方針で固まっていたはずが、朝の1回目の総会で異論が噴出。本会議を挟んだ昼休みの2回目でも反対意見が相次ぎ、予定外の3回目を迎えたのだ。
「ご意見をちょうだいする」と幹部が切り出すと、数人の県議から反対論が次々と上がった。賛成の声は少数に押され、最終的に決を取ることになった。賛成なら○、反対なら何も書かないという方式で採決が行われた。
6日前、幹部は事前に知事に対して賛成する意向を伝えていた。1年にわたって決着がつかなかった給料削減案は、6月定例会で可決される公算が大きかった。しかし、結果は「○は15、ないのが19」。賛成が15票、反対が19票で、状況は一変した。
総会を終えて出てきた反対派の県議は高揚した様子で「まさか、こんなことになるなんて」と語った。一方、賛成を主張していた県議は「雰囲気は向こうにあった。でもわずかの差で勝てると思ったのに。その夜は控えていた酒をがぶがぶ飲んでしまった」と振り返る。
火種となった告発者をめぐる発言
何がこの事態を招いたのか。背景には、亡くなった告発者をめぐる知事の二つの発言があった。知事が提出した給料削減案は、自身の給料削減率を従来の30%から50%に引き上げる内容だ。県の内部告発問題に絡み、告発者の私的情報が漏洩した管理責任を取るという理由だった。
元々の給料削減案は2025年6月に提出されたが、議会側は慎重な姿勢を崩さなかった。問題が「幕引き」になることを懸念し、告発者の私的情報を県議に漏洩したとして知事が地方公務員法(守秘義務)違反容疑で刑事告発されていることから、結論が出ていないとの理由で継続審査としてきた。知事が管理責任に限定する理由を明記したのも、議会側の求めに応じたものだった。
2026年3月、神戸地検は知事を不起訴(嫌疑不十分)とした。不起訴後初めての県議会となる6月定例会で、自民党幹部は2日、知事に賛成の方針を伝えた。同時に、県民への説明責任を果たすことや真相解明を続けること、再発防止など5項目の申し入れを行い、知事からは「しっかり受け止める」との回答を得ていた。
しかし、翌3日の定例記者会見で知事が告発者に関する発言をしたことが火種となった。知事は「告発者は残念な結果になったが、私としては真摯に受け止めている」などと述べ、議会側の一部に「誠意がない」との印象を与えた。さらに、別の場面で「告発者の行動が問題を複雑にした」と発言したことも、県議の間で反発を招いた。
これらの発言が、賛成派だった県議の一部を反対に回らせたとみられる。総会では「知事の姿勢が変わっていない」「管理責任を取るというが、真摯さが感じられない」との声が相次ぎ、最終的に反対が多数を占めた。
給料削減案は11日、4回目の継続審査となる見通しで、知事と議会の対立はなお続きそうだ。



