大阪都構想の住民投票対象拡大案に党内外から疑問の声
自民党と日本維新の会が合意した「副首都構想」関連法案の骨子案を巡り、維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は、法案が実現すれば「大阪都構想」の賛否を問う住民投票の対象を従来の大阪市民から大阪府民へ拡大できるとの見解を示した。これにより、大阪市の廃止につながる都構想への賛否を府民全体で決める可能性が浮上し、党内外で波紋が広がっている。
住民投票の対象拡大を可能にする法案の骨子
自維の実務者協議で先月31日に合意された骨子案には、「副首都が名称変更を希望する際の住民投票等の手続等について定める大都市法(大都市地域特別区設置法)の改正を行う」との付則が盛り込まれた。大都市法は、大阪都構想の手続きを規定している法律だ。
付則には住民投票を府民に拡大できると明記されていないが、吉村氏は4月1日に記者団に対し、「副首都を目指すのなら『大阪都』に名称を変更することも可能な法案になっている。その場合、住民投票は府全域となる」と述べた。さらに、1日夜には自身のユーチューブチャンネルで、維新の斎藤アレックス政調会長と共に骨子案を解説する動画を配信し、法案成立時には「大阪市を廃止して特別区を設置(大阪都構想)」と「大阪府から『大阪都』への名称変更」を府民対象の1回の住民投票で問えると説明した。
一方で、都構想のみを問う場合は市民が対象となり、名称変更には別途府民対象の住民投票が必要だと補足。どちらの選択肢を取るかは、府・市の法定協議会で決定されるとした。
府民対象案に維新市議団が反発「やり方が強引」
吉村氏が目指す来年春までの住民投票実施に慎重な姿勢を示す維新の大阪市議団は2日、緊急で非公開の会合を開催。竹下隆幹事長は終了後、記者団に「大阪市内のことを府民に決めてもらうのは、ちょっと違う」と懸念を表明した。
市議団は今月5日から、都構想への3度目の挑戦について市民に意見を募るタウンミーティングを開始する予定だが、ある維新市議は「今のタイミングでいきなり対象拡大を言われると、市民から説明を求められ、集会が混乱する。やり方が強引だ」と語り、市民との対話に支障が出る可能性を指摘した。大阪市幹部も2日の取材で「理解ができない。吉村氏は焦っているのではないか」と困惑の声を上げた。
賛成と反対の民意が分かれる背景
読売新聞などが2月8日投開票された府知事選で実施した出口調査では、府内の有権者に大阪都構想の賛否を尋ねたところ、賛成(54%)が反対(38%)を上回った。しかし、2015年と2020年に大阪市民を対象に実施された住民投票では、どちらも反対が賛成を上回っており、市民と府民の間で意見の隔たりが存在する。
当初、住民投票の対象を府民とするか市民とするか議論があったが、「大阪市存続に対する思い入れは市民より府民の方が少ない」として府民対象なら有利との見方もあった。しかし、住民投票後にしこりを残さないためにも市民を対象にすると決まった経緯がある。
自民党内でも慎重な議論が続く
自民党の小林鷹之政調会長は2日の記者会見で、骨子案について「名称変更に関する文言が盛り込まれていることは承知している。党内でもこれから様々な議論がなされる」と述べ、慎重な姿勢を示した。同日夕には、実務者協議に参加した自民衆院議員が党府連所属の地方議員らへオンラインで説明を行い、「党内手続きはこれからなので、骨子案の内容は本決まりではない」との説明があったという。府連所属の衆院議員の1人は「反対だと主張していく」と語った。
専門家からは地方自治の原則に逆行との指摘
昇秀樹・名城大名誉教授(地方自治)は、「大阪市のことは市民が決めるのが住民自治の基本で、府民の判断で市を廃止できるというのは、地方自治の本旨に逆らっている。市廃止の是非を名称変更の住民投票に組み込むという手法も不適当で、住民の分断が起きる可能性もあるのではないか」と批判した。
大阪都構想を巡る住民投票の対象拡大案は、地方自治の原則を揺るがす問題として、今後も議論が紛糾しそうだ。



